バトルシップ : 映画評論・批評
2012年4月10日更新
2012年4月13日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
巨大艦船同士の迫力ある海洋アクションと侵略SFを掛け合わせた痛快作
ジャンルでいえば侵略SFだが、過去の作品にはなかったおもしろさが詰まっている。
突如飛来した異星人艦隊は、即座に攻撃を始めない。人類の出方を見ているようで、駆逐艦が警笛を鳴らすと“音”で応える。だが、その音は人間には武器で、意志疎通が果たせぬまま戦闘になだれ込む。このファーストコンタクトの過程は、リアルで味わいがある。
異星人が、バトルスーツを脱がすと人間に似ており、感情が感じられる設定もうまい。ピーター・バーグ監督は、彼らの視線映像で人類の武器や技術を分析していることを示し、彼らもまた手探り状態だと推察させるのだ。
異星人の兵器は強力だが、人類の兵器の近未来形の趣で、その艦船もうまく攻撃すれば破壊できる点も説得力があり、バリアーを張って時間を稼ぐ彼らの行動も納得できる。
そして見事なのは、そのバリアーで、戦闘海域と戦い方に制約をもたらした展開と戦いの迫力ある描写だ。巨大な艦船同士が、レーダーの使えない状況下で対峙し、知恵と勇気がものをいう海戦を存分に楽しめる。日本の自衛官ナガタ(浅野忠信)が相手の動きを波から読んで攻撃すると、米軍の無鉄砲な将校アレックス(テイラー・キッチュ)は捨て身の作戦を見せ、じつにおもしろい。
さらに、最後の頼りが古いアナログ兵器となる展開は楽しく、それを使いこなせる老いた退役軍人たちと共闘する姿は気持ちがいい。バリアーの外でアレックスの恋人とリハビリ中の兵士が奮闘する絡みも適度で、爽やかだ。
異星人の通信速度など突っ込み所も多いが、テンポがよく、気にせず痛快な戦いを満喫できる。
(山口直樹)