アウトレイジ ビヨンドのレビュー・感想・評価
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【90.8】アウトレイジ ビヨンド
『アウトレイジ ビヨンド』(2012) 批評
作品の完成度
前作『アウトレイジ』が暴力の連鎖とヤクザ社会の内部抗争を密室劇的に描いたのに対し、『アウトレイジ ビヨンド』は、暴力の範囲を広げ、警察組織の介入と、より大規模なヤクザ組織間の勢力争いを描いた一大群像劇。前作からの登場人物と新たなキャラクターが入り乱れ、それぞれが思惑を巡らすことで、予測不能な展開を生み出す。登場人物の誰もが腹の内を見せない駆け引きと、いつどこで暴力が爆発するか分からない緊張感の持続は、北野武監督の演出手腕の真骨頂。しかし、その群像劇の複雑さが、物語の核心をやや拡散させている側面も。前作の持つ、閉鎖的な世界での狂気と絶望感の純度は薄れ、物語のスケール拡大がもたらすカタルシスよりも、各キャラクターの思惑が絡み合う様を見せることに重きが置かれている。シリーズとしてのスケールアップは成功しているものの、単体作品としての完成度としては前作の密度の高さには及ばない印象。
監督・演出・編集
北野武監督の演出は、極めて洗練されたもの。ヤクザの会議シーンや、キャラクター同士の対話シーンは、一見すると静謐な空気感の中、常に張り詰めた緊張感が漂う。暴力描写は前作に引き続き、残酷かつコミカルなまでに簡潔。血しぶきが飛び散る瞬間も、どこか冷静な視点から描かれており、過剰な感情移入をさせない乾いた演出が特徴。編集もまた、その乾いた演出を支える重要な要素。不要なシーンや説明的な台詞を徹底的に排除し、場面転換は迅速。観客は常に情報不足の状態で物語に放り込まれ、登場人物たちの意図を読み解くことを強いられる。この緊張感が、作品全体を支配している。
キャスティング・役者の演技
主演、助演、それぞれが重厚な存在感を放ち、作品世界を構築している。警察側の片岡(小日向文世)と繁田(松重豊)の二人の刑事もまた、その思惑と正義感の対立で物語に深みを与えている。
ビートたけし(大友)
前作で壮絶な末路を辿ったかと思われた大友の再登場は、本作の最大のサプライズ。刑務所から出所し、すべてを失ったかのように見えながらも、その内なる狂気と暴力性は健在。彼の目の奥に宿る虚無感と、いつ爆発するかわからない獰猛さのコントラストが、大友というキャラクターに深みを与えている。多くを語らず、佇まいだけで物語を牽引する彼の演技は、まさにカリスマ的。北野武という存在そのものが大友というキャラクターと一体化し、凄みを増している。シリーズを通して、大友は暴力の象徴であり、同時にその暴力に翻弄される哀れな男という両面性を持ち合わせているが、本作ではその悲哀がより深く描かれている。
西田敏行(西野)
山王会若頭の西野を演じる西田敏行は、温厚な外見の裏に隠された老獪さと非情さを完璧に表現。表面上は丁寧な言葉遣いで穏やかに振る舞いながらも、その言葉の端々には冷酷な計算が垣間見える。彼の演技は、ヤクザ社会の複雑な人間関係と、権力闘争の陰湿さを巧みに映し出す。笑顔の裏に隠された冷酷さは、見る者を戦慄させるほど。特に、花菱会との駆け引きや、自身の手下への容赦ない仕打ちのシーンでは、その二面性が際立ち、物語に重層的な深みを与えている。
三浦友和(加藤)
前作で会長の座に就いた山王会会長の加藤を演じる三浦友和は、権力を手にした者の苦悩と、その地位を維持するための冷徹さを体現。以前の、どこかコミカルな雰囲気は消え、常に権力の座に脅え、疑心暗鬼にかられる姿を演じている。彼の演技は、ヤクザ社会の頂点に立つことの孤独と、周囲への不信感を痛々しいまでに表現。強大な組織のトップでありながら、決して安息を得られない彼の姿は、この世界の虚しさを象徴している。
加瀬亮(石原)
前作では大友組の若頭として狡猾な一面を見せた石原を演じる加瀬亮。本作では組織の幹部として、さらにその狡猾さと野心に磨きがかかっている。飄々とした表情の裏で、常に自分の利益を計算し、裏切りを厭わない冷徹なキャラクターを好演。ヤクザ社会における合理主義と、感情を排除した行動原理をリアルに描き出している。終盤、山王会会長の座を狙う野望が潰え、すべてを失い怯える様子は、小物としての側面を強烈に印象づける。特に、大友に捕らえられた際の必死の命乞いや失禁は、彼のキャラクターの徹底ぶりを物語っている。
高橋克典(城)
花菱会のヒットマン、城を演じる高橋克典は、セリフをほとんど発しない寡黙な役柄で異様な存在感を放っている。物語の中盤から登場し、次々と山王会の構成員を葬っていく彼の姿は、まるで死神のよう。無表情で冷徹な佇まいと、洗練された暴力は、前作までのヤクザたちの剥き出しの狂気とは異なる、プロフェッショナルな恐怖を観客に与える。彼の演技は、静寂の中にある暴力の恐ろしさを際立たせ、作品全体に不穏な空気を漂わせている。
脚本・ストーリー
前作の「裏切りと報復」というシンプルな構造に対し、本作は警察の介入、東西ヤクザの抗争、組織内部の権力争いなど、複数の要素が複雑に絡み合う群像劇。登場人物が多いため、それぞれの思惑が錯綜し、物語は重層的になる。しかし、その複雑さが、前作にあったような暴力の純粋な連鎖、その狂気と哀愁といったテーマ性をやや薄めてしまった。ストーリーは予測不能な展開に満ちているものの、個々のキャラクターの掘り下げがやや浅くなった印象。
映像・美術衣装
前作に引き続き、無駄を削ぎ落としたソリッドな映像美が特徴。陰影を活かしたライティングや、構図の美しさが、ヤクザたちの冷酷な世界を表現。美術は、ヤクザの事務所や料亭、刑務所といった空間のリアリティを追求。衣装も、スーツの着こなしや、キャラクターごとの個性を反映しており、リアリティを高めている。
音楽
鈴木慶一が手がける音楽は、緊張感のある不穏な旋律で、作品の雰囲気を高めている。本作に主題歌はない。
受賞歴
第86回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第3位。
作品
監督 北野武 127×0.715 90.8
編集
主演 ビートたけしA9×2
助演 西田敏行 S10×2
脚本・ストーリー 北野武 A9×7
撮影・映像 柳島克己 A9
美術・衣装 美術
磯田典宏
衣装
黒澤和子 A9
音楽 鈴木慶一 B8
ストーリー
過去鑑賞
前作に引き続き出演されていた小日向文世さんや三浦友和さんの演技はさすがでしたが、それ以上に加瀬亮さんの小者っぷりの演技は秀逸でしたよね╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !
普段は善い人の役が多い西田敏行さんも、こういう役をやるとギャップがあってかなり怖く、キャスティングも相変わらず良かったですね。
この作品も何度か観ていますが、一作目には及ばないものの、やっぱり面白いですね。
演出やカメラワークなど(笑いのセンスも含めて)北野武さんのセンスの良さに改めて感心してしまいました。
ストーリーとしては多少強引な箇所もありますが、独特の雰囲気と緊迫感で、観ている最中は、それもあまり気にならなかったです。
終わり方も良かったですね。
やくざ映画というより、殺し屋映画。
壮大なスケールの子供のケンカ
前回よりも抗争の構図がスケールアップして、更に俳優陣も豪華になり、それぞれがドスを効かせて迫力も増しているけど、争っている内容は、オレが偉いんだ、とかあいつが気に入らない、とか子供のケンカみたいな内容。加瀬亮の小心者丸出し感の演技がとても良く、この子供のケンカみたいな争いを大人がやっていることの滑稽さを表しているなあ、と個人的に好きです。
前作から出ている俳優陣は更に個性や巧さが出て、三浦友和はダサい(セコい)悪さが滲み出ていて、本当に上手い俳優さんだなぁと感心した次第です。
今作から出ている俳優陣は、前作のムード、雰囲気を壊すことなく、それどころか更に凄みを増すことができて、豪華俳優陣を使いこなせた北野武監督の手腕はさすが、と思わずにいられませんでした。
前作、本作の楽しみかたはもちろん人それぞれですが、普段あまり悪役を演じない人たちが、ああこんな悪役も出来るんだなあ、と鑑賞するのもひとつの楽しみかたなのかな。
隠し通せる嘘なぞ無い
アウトレイジ続編。今回も期待して鑑賞。
期待を裏切らない面白さ。最高です
最終章で完結ですが、もっともっと続きを作って欲しいです。日本のヤクザ映画は北野武に託したい
山王会会長が加藤に代替わりしてから早5年。
政治の世界にまで勢力を拡大する山王会に対して、組織の破滅を図る警察が動き出す。
前回に引き続きスピーディな展開で永遠と楽しめる。
かといって話がわからなくなることも無く、今回は前回よりも熱い内容になっている。
全員、悪人度が増している。
特に石原(加瀬亮)と片岡(小日向文世)の極悪さがすごくイライラする。それもあってか焦っている姿が最高笑
前回もそうだったが、今回はよりビックリするスペシャルゲスト。ホント一瞬だけどね
登場人物が増え、内容も濃ゆくなっているので見応えバッチし。特に新井浩文と桐谷健太のコンビは笑えちゃいますね。警備を務めようと前に進む新井とカレーが食べたすぎて思わず椅子に座っちゃう桐谷。いいね笑笑
ただ、前作よりもさらにグロさが減少しているのが残念。人も淡々と殺しすぎるしちょっと雑。
緊迫感が微妙だなぁ、、、。
まぁでも相変わらず大好きな作品です。
あー、ヤクザ映画最高だな!
また豪華なキャスティング!
無難。日本文化を知るためなら、まず前作を推薦します。
★を一つ減点したかったのは、大阪方のヤクザという配役の役者が話す、ヘンテコリンな大阪弁。
大阪弁のイントネーションは、そんなに東京の役者にはむづかしいのかなと思うけど、違和感が強く、背中がゾワゾワしてストーリーに集中できなかった。
もうちょっと勉強しろよ特に西田敏行!
前作は、外国人に対して「ヤクザが指を詰めるという文化の背景」をはじめとする、日本のウラ文化案内……みたいな趣もあって大成功したのだと思う。
今回の作品は、そういうウラ文化案内の面が薄く、また第三作に向けての伏線張りにも忙しく、結果として前作ほどには面白くなかったけれど、それでも娯楽作として及第点だと思った。
なお、ストーリーの感想ではないが、よくぞこれだけ雰囲気があるロケ地を多く見つけ出したものだと感心した。
続投の5人
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