「昔、何度か観た映画ですが」グラン・ブルー 完全版 greensさんの映画レビュー(感想・評価)
昔、何度か観た映画ですが
その昔、好きで何度か映画館で観た(短いバージョンも長いバージョンも)映画です。今回4Kリマスター版が上映されると聞いて観に行ってきました。
まず映像については4Kで確かに良くなっているのでしょうが、それでも今の映像技術と比べるとそこまででもないかな、と感じました。今の映像技術は本当に昔と比べて進歩したので、鮮明さ、迫力等が違うのは仕方ないかなと思います。
この映画が大ヒットとなった当時、映画の主人公としてその名前も作品中でそのまま使われている潜水士ジャックマイヨールさんの本「イルカと海に帰る日」を買って読んだりしていました。ジャックマイヨールさんが、映画での潜水士(自分)の描かれ方に反対をされていた雑誌記事(女性ファッション誌の中の記事ですが)も当時切り抜いていて、昨年家の大掃除をした際に発見して読み返しました(今思えば、読み返したのが縁で今回の映画鑑賞に繋がったのかも)。その記事は読んだ後処分してしまったので正確ではありませんが、自分の海との向き合い方は映画の中で描かれているようなものとは違うし、あのような海との向き合い方をロマンチックに描くのは違う、というような意見だったと記憶しています。
マイヨールさんの唱えた反対についてはそれ以上分かりませんが、映画の最後、深い海の世界に惹かれるまま、ジャックが恋人のジョアンナを置いて海に消えていってしまうのは何度見ても悲しいですね。昔見た時もそこは残念に感じたところでしたが、今回もその点は変わらずでした。磁石が引き合うように運命の相手とめぐり逢った二人なら、二人一緒だからこその人生を送ってほしかった、、、こういう運命の出会いだったら、自分がもしジョアンナなら、悲し過ぎてその後どうやって生きていけば良いか分からなくなると思います。
この映画の後ずいぶん経って、実在のマイヨールさんが鬱病等が原因で自らの命を絶たれたのにはとてもショックを受けました。マイヨールさんが海に潜り始めたのは日本の佐賀県で、潜水に禅の修行を取り入れるなど、日本にも縁の深い方でしたし、とても残念で、映画のエンディングに対するすこし残念な気持ちと、マイヨールさんが無くなったことへのなぜ?というモヤモヤした気持ちが絡まり合って、この映画の記憶と共に封じ込めらた状態で、今回の鑑賞に至りました。今なら、もしかしたら長い期間潜水を続けるとそれが脳に影響を与えて鬱病の原因になるということもあるのかも、、とも思えますが(アメフトの選手に脳疾患が多いように)、当時は「なぜあんなに精神の安らかさを大切にしていた方が自らの命を絶ってしまったのだろう」と納得できない気持ちがありました。
そんな封じ込めたモヤモヤも影響したからか、長い時を経て改めて観たこの作品は、俳優さんたちの素晴らしさ、ジャックとエンゾの子役さんたちの素晴らしさは全然色あせていませんでしたが、映像から来る素晴らしい青のイメージが薄らいだのに合わせて、作品に対する自分の気持ちも少々薄れた感じがしました。我ながらちょっと寂しく感じましたが、映画作品から映像のすばらしさを差し引いた時に残るものが何なのかによって、その作品の良さが影響されるのかも、、、という気がしました。映画で描かれた人の心とか、そういうものは、時代を経ても色褪せずに見る人の心に響いてゆくのかもしれません。あとは、自分が実際に人生を生きてきて、あのエンディングに対する気持ちが変化したということなのかな…若い時は人生は未知にあふれていて、ジャックとジョアンナのような出会いと別れもあるのかもしれないとボンヤリ思っていたのが、「人生は作り出してゆくものだから、もし二人が運命の相手同士ならば、共に生きてこそ」と願う気持ちが強くなったのかもしれません。
また、作品の印象が薄らいだことで逆に気づいたのは、どれだけ時間が経っても“良い”とか ”好き”、と思える出会いというのはすごいことなんだな、ということでもありました。そういう出会いは人でもモノ(映画作品等もふくめて)でも、奇跡的だと感じました。
さらに話は全然変わりますが….この映画を見てかつての印象が薄れてちょっと寂しい気持ちになっていた時にたまたま、家で宇治の平等院にある「雲中供養菩薩(国宝)」の写真集を見つけて見たのですが、おそらく昔の人が感じたのと同じように、今の自分が見ても、圧倒されるほど完璧な美しさ!たなびく雲の上に色々な楽器を奏でる菩薩像が乗っているのですが、なぜ千年近く昔の造形物がため息が出るほど美しいと感じるのか‥‥。奇跡的だなあ…と感じました。あ〜、こういう国宝を色々とめぐる旅とかしてみたいかも!ちゃんと下調べもしておいて、リュックを背負って、国宝をめぐる!…青い海の映画を見て、なぜか秋旅をしたい気分になりました(笑)。明日は映画の舞台挨拶つき鑑賞会に午前中から出かけてきます!芸術の秋です!笑