劇場公開日 2006年5月13日

「自分が自分でなくなる恐怖」明日の記憶 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自分が自分でなくなる恐怖

2013年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

難しい

総合65点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )

 前半の、痴呆で仕事をうまく行えなくなる渡辺謙の焦りと、痴呆とそれがもたらす恐怖とそれによって変わる周りの環境を受け入れて覚悟を決めるまで。それから後半の、家庭で衰えていく自分自身とそれを支える妻との優しく激しいやりとりと愛情。二つの物語と見どころがあった。職場・家庭の日常の焦燥感と軋轢と人々の優しさとが描かれていたし、特に仕事で失敗して崩れていく前半の渡辺謙と、後半の夫婦二人の演技は良かった。
 しかし本当に身につまされる話だった。痴呆の人を何人か知っているし、観ていて怖くて仕方がない。最近若いころと違ってくだらないことが思い出せなくなって来たりしている自分の姿と重ね合わせていると、とても他人事とは思えない。そうなるともし自分がそうなったらと、映画として単純に観ていられない自分がいる。これからも症状が悪化していくまま互いの関係をどうして維持していくのかと思うとすっきりしない。ただただ恐怖と空虚さと現実の世話の大変さが重く降りかかってきてやるせなくなる。自分が自分でなくなり思い出の共有もままならなくなるなんて、まだしばらくこのような話からは目をそらしていたい。

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Cape God