バルトの楽園(がくえん)のレビュー・感想・評価
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丁寧に丁寧に・・・でも少し丁寧すぎましたかね。
第一世界大戦時。捕虜になったドイツ兵と、板東捕虜収容所の所長・所員達の交流を描く物語。
実話を基にしたお話ですね。漫画「銀の匙」でソーセージ伝達話が触れられていたので、何となく知っていた逸話ではありますが、勉強の意味も含めて鑑賞。
収容所の話は、過酷な環境で描かれることが多く、実際に殆どはそうなのでしょう。それだけに、このお話は一風の清涼剤のように心が安らぎます。
映画は凄くしっかりとした作りです。冒頭の戦闘シーンは迫力も十分。
でも、本編は地味・・・でも丁寧。音楽やソーセージ等の文化を積極的に伝えるドイツ兵、それを受け入れ尊敬を持って接する所員と市井の人々。彼等の情景を、変に大袈裟にすることなく丁寧に描きます。
良い話だけでなく、軍上層部や久留米捕虜収容所等の日本の酷い一面もしっかりと描き、それでも松江所長の使用人のように、身内を亡くした一庶民の感情も描きます。まさに一方的にならないように、丁寧に丁寧に練られた映画のように感じました。
難点を言えば、無駄が多い。上映時間134分は長すぎます。会津の回想シーン等、尺を削れるシーンは幾つもありました。
配役も残念。折角の好素材なのに、板東英二や泉谷しげる等を観ると軽すぎて「再現ドラマ?」と思えてしまいます。ハーフ少女役を演じた大後寿々花も、とてもハーフには見えません。ブルーノ・ガイツ迄引っ張り出した作品なのに、この落差に驚きます。
ラストも残念。クライマックスの第9から・・・エンディングも第9。続けざまでは工夫がなさすぎます。
私的評価は普通にしました。
最後に現代の第九演奏を入れる必要はなかったと思う
「人間は信頼すればそれに応えようとする」
きっとこれは、真実なんだろうね(例外はあるだろうけど)。
戦争捕虜収容所は、うまくすれば異文化交流の場所になんだなぁ、と感心した。
ただし、全体的に綺麗過ぎる。
そこに偏りや、「感動させるべし」という目論見を感じないではない。
この中では、収容所のあり方に反発する人はごく少数しか描かれていないが、実際には「うまさん」みたいな人はもっとたくさんいただろう。
板東の収容所だけが楽園のように描かれているけれども、他の収容所でだって、多少の交流はあったかもしれない。
そういうことを織り込めれば、もっとリアルになったんじゃないだろうか。
ドイツに帰国した兵士たちが、板東でのことをどう語っていたのか、書いていたのか、そっちがわの視点も見てみたい。
人種ではなく人格
東映と揉めたらしいが実質、直木賞「二つの山河」(中村 彰彦)の映画化であろう、本は短編故、掘り下げられなかった人物像も映画では丁寧に描いて収容所での日独文化交流、第九初演の秘話を今に伝えています。
近代日本は、軍事、法制、医学を始めとする多くの分野においてドイツを手本としてきた下地もあったのだろうが松江豊寿という人物がいなければ到底不可能であったろう。また福島、四国と言う郷土文化が色濃く説得力を添えている。松江所長は維新で苦汁を舐めた会津藩士の末裔であり、四国には「お接待」という無償でお遍路さんにお菓子や飲み物などを施す文化が根付いています。殺し合った敵同士が理解を深め同じ日本人同士が反目する構図は人種ではなく人格の違いであり知性、理性の重みであることが読み取れます。出目昌伸監督渾身の秀作でした。
松江所長自体はいいテーマなんだが
松江豊壽自体は会津が生んだ偉人といっていい人材だが、なんとなく間延びした仕上がりの作品。やっぱり暴れん坊将軍ではちょっと違うかなぁ。とかく大味な感じになってしまった。
とても良い映画でした
とても素晴らしい日本人達とドイツ人達のお話です。
第一次世界大戦では戦勝国となった日本と敗戦国となったドイツ人が四国で捕虜となっていた事も初めて知りました。この後、日本はドイツと同盟国になりアジア諸国で同様に捕虜収容所を作り、敗戦後はシベリア始め過酷な捕虜収容所で多くの命を落とす事になる。いろいろと考えさせられつつも笑えて泣けた良い映画でした。
暴れなかったし、馬にも乗らなかった松江所長(松平健)。サンバを踊るかと思っていたら、阿波踊りを踊っていた
笑ってしまいそうになったけど、こらえました。実話がベースなだけに徳島の坂東捕虜収容所の物語に坂東英二が出演・・・さすがに彼は久留米の所長だったようですが、下手するとコメディ映画になってしまうところです(実際に彼の故郷だそうです)。また、脱走ドイツ兵カルルが匿われた民家では市原悦子が「日本昔ばなし」のように傷の手当てをし、パロディっぽい会話にほんわか気分にさせられましたが、青のコンタクトをつけた大後寿々花と自転車の少年なんて『SAYURI』のパロディだとしか思えず、これで松平健が白馬に乗って海岸を走っていたら卒倒してしまうところでした。
第一次大戦中の敵国ドイツ。その捕虜に対しても人間らしく扱い、その恩返しとして日本では初めてのベートーベン第九交響曲を演奏してくれるというストーリー。テレビのスペシャルドラマでも観たことがあるのですが、この映画ではドイツの偉大な音楽に触れる喜びよりも会津出身の所長の寛大な待遇を讃えるような内容になっていました。それはそれで映画として成り立つのですが、感動できるはずの第九の演奏に関しては、最後にちょこっと付け足したというイメージしか残りません。もっと楽団員をクローズアップしなければ、この映画のタイトルそのものも「がくえん」と読ませるより「らくえん」のほうがいいのではないかとも感じてしまうのです。
松江豊寿という人物は会津人として政府や軍部に虐げられたという過去もあり、その辛い経験とドイツ兵捕虜に対する優しさは「武士の情け」というキーワードで結びつく。積極的なドイツ文化吸収と人道的扱いという功績を残す彼は尊敬に値する人物なのに、感動できないのは何故なんだろう。やはりこの映画の作り方。ドイツ音楽の素晴らしさや印刷技術、パンなどの食文化を取り入れた事実よりも、愛国心や武士道ばかりが強調されていたことや、ドイツ音楽に傾倒していく日本人がほとんどいなかったことが原因なのかも・・・
最後に、頼むから、第九を聴きながら阿波踊りやヘッドバンキングするのはやめてください・・・実際に日本人の反応はそんなものだったのかもしれないけど、笑ってしまうじゃないですか・・・
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