「人物は描けているが、戦争スペクタクルとは言い難い」聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実 KGRさんの映画レビュー(感想・評価)
人物は描けているが、戦争スペクタクルとは言い難い
役所広司、柳葉敏郎、吉田栄作、阿部寛、椎名桔平、伊武雅刀、坂東三津五郎、柄本明、香川照之。
*
山本五十六の人となりを史実に即してなぞっていく。
海軍次官退任前後から、死亡するまでの数年を2時間20分で描こうとすれば、どうしてもエピソードを追うのが中心になる。
人物を描くためには必要ではあっても映画としては駆け足にならざるを得ない。
テーマを大きいイベントに絞ればもう少し掘り下げられたろうが、それは描きたいものとは違ったんでしょうね。
基本的には史実に基づいていると思うが、細かいところでは違っているようだ。
最も大きい違いは、愛人(妾)がいたことで、映画では妻に渡した恩賜の時計は妾の河合千代子に贈っている。
当時としては、妾に大きな倫理的な問題はなかったんだろうと思われる。
その証拠に山本五十六の火葬後の遺骨が河合千代子にも分骨されているそうだ。
*
通常戦争映画は、見方、立場はどちらかの一方的なものであっても、状況や行動、展開は双方から描かれるものだが、この映画は日本以外の描写が全くと言っていいほどない。
(見方が一方的だという批判ではありません)
それはそれで構わないのだが、真珠湾、ミッドウェー、ブーゲンビル島などで、米軍が無電を傍受、暗号を解読していたとの解釈は一切出てこない。
そのため、観客には判っていて、当事者は知らないことによるドキドキ感、悲壮感が伝わらないのは残念だ。
コメントする