「新たなるスタートライン」007 スカイフォール tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
新たなるスタートライン
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最初に題名を知ったときはてっきり「宇宙(衛星)兵器」か「ミサイル」をネタにした話かと思っていたら、なんとボンドの生誕地にかかわる地名だった。
冒頭の導入部が非常に面白く、本編はどれほど凄いのかと思っていたら、正直少し期待外れだった。Qがそれほどの働きを見せなかったり、Mの死にあまり必然性がなかったりするのも一因だが、何より敵キャラが弱い(力ではなく存在感が)のが致命的。何か中途半端なオネエ系のような雰囲気だが、それが全然魅力になっていない。組織を裏切り、その後ろ盾を失ったスパイが、ここまで強大な力を得てMI6を翻弄することに全然得心がいかないのだ。
この作品の存在意義はシリーズの「破壊と再生」を担うことにあるのではないだろうか。MI6の本部が破壊され、MもQも世代交代となり、更に現代におけるMI6の存在に否定的な立場を代弁する女性議員も、その直前のMの発言と自身が襲撃されたことで「現代社会においてもスパイは必要だ」と考えを転換するだろう。またボンド自身も闘いの過程で自らの過去を(その象徴である家と共に)葬り去った。その意味するところはMI6及びボンドのリセットであり、シリーズがまた新たなスタートラインに立ったということではないだろうか。
次作からは過去のボンド像に囚われることなく、新たなダニエル・ボンドが活躍する姿が見られることを期待したい。
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