劇場公開日 2023年11月17日

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「完全リブート3部作」007 スカイフォール マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0完全リブート3部作

2012年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

シリーズ23作目の本作は、映画シリーズ化50周年のアニバーサリー作品でもある。
そのため、ストーリーとは別の楽しみも多い。

兵器開発のQが、第20作「ダイ・アナザー・デイ」(2002)以来10年ぶりに登場する。ダニエル・クレイグがボンドになってからは初めてだ。
本作でボンドとQが初めて対面するロンドン・ナショナル・ギャラリー。二人の目の前には油絵が展示されている。イギリスの風景画家の大家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの海景『解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号』だ。1838年の作品で、就役を終えた木造帆船が新鋭の蒸気船に曳航されて解体のためドックに向かうところが描かれている。産業革命による新旧交代を象徴する絵だ。本作のテーマはまさに新旧交代。
ここでQからボンドに手渡されるのがワルサーPPKのスペシャル版。

ボンドといえばこの愛銃PPKとボンド・カーだ。第3作「ゴールド・フィンガー」(1964)でQが様々な装置を搭載して初登場する。そのときの懐かしいアストンマーチンDB5が色褪せない勇姿を見せる。

そしてもうひとつ、007といえばボンド・ガールだ。今作もナオミ・ハリスとベレニス・マーロウが魅力を振り撒くが、なんと今作の筆頭ボンド・ガールは77歳のジュディ・デンチだ。
ご存知、MI6の責任者Mで、第17作「ゴールデン・アイ」(1995)で初の女性Mに就任して以来、本作が7作目となる。
ダニエル・クレイグによるボンドが登場してからは、Mはやや無鉄砲な行動があるボンドをたしなめる母親的存在に見える。思えば「カジノ・ロワイヤル」や「慰めの報酬」でも、諜報員としてだけでなく人として逞しく生きる指標をボンドに与えてきた。
今作では、事件の鍵を握る彼女が、心の中ではボンドに対し絶対の信頼を寄せる姿が描かれる。

007の音楽といえばジョン・バリー。トーマス・ニューマンによる音楽は、低音の尾を引く響きがジョン・バリーのサウンドを彷彿させ耳に心地いい。アデルによる主題歌もシリーズらしいスケールがある。
そして音響に変化があった。ここ2作は高音域が硬く耳に痛い効果音が多かったが、本作は全体に柔らかい音質で落ち着きがある。

冒頭でボンドを誤射してしまったイヴのフルネームが明らかになるラストに、007ファンはニンマリすることだろう。
「カジノ・ロワイヤル」によってリブートされたはずのシリーズだが、観終わってみればダニエル・クレイグによるボンド3作品によって完全リブートを果たす結果に。
今作では、完全リブート3部作をあたかも初めから狙っていたかのような脚本と演出で、これが実に巧妙だ。

マスター@だんだん