「被災地での撮影」ヒミズ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
被災地での撮影
住田にはDVの父親(光石研)がいる。蒸発していたのに600万もの借金を背負いながらも、突如現れては母親(渡辺真起子)が留守のため、祐一に金をせびる。金がないとわかると、殴る蹴るの暴行を加えて祐一を痛めつける。そんなことの繰り返しだ。そして母親は男を作って家を出て行ってしまう(相手がモト冬樹というのはいただけないが・・・)。
暴力を振るうのは父親だけじゃない。借金の返済をせまる金子ローンの社長(でんでん)と谷村(村上淳)だ。子供に言ってもしょうがないのに、容赦なく暴行を加える。祐一の性格なんて、かなりひねくれ者。幼少の頃から痛めつけられてきたせいだろうか、痛めつけられても身体的・精神的にも逞しくなっている。学校での発言なんてのもかなり皮肉屋だったり、結構かっこいい言葉を吐くもんだから、茶沢景子は住田語録を作って、壁に貼りめぐらせてるくらいだ。
実は、景子の家も借金まみれ。一見して豪邸のようにも思えるが、かなり荒れていて、いつ自殺してもいいようにと絞首台を夫婦で作ってるという異様ぶり。ここでも母親(黒沢あすか)のDVがあった。そんな不幸のどん底にある景子だからこそ、DVまみれであってもたくましく育つ祐一に憧れを抱いたのだろう。
監督秘話では、撮影直前に発生した3・11の東日本大震災を受けて、台本を大幅に変更した。被災地である石巻市での撮影も行い、効果的に使われていることは確か。ボート屋の周りに住む被災者たちも、放射能のことも気にせず仲間としてくれる中学生の住田を尊敬している様子だ(ちょっとコミカルなキャラだが)。この被災地の映像をそのまま使っていることも賛否両論の原因となっている・・・絶望の中でも生きていく勇気を持つというメッセージは感じられるが、基本はDVや暴力・殺人だから・・・
基本的にはDVを中心に、人を人とも思わぬくらいに暴力まみれとなっている世の中を何とかしたいと思うようになる祐一と、愛を持って彼を救おうとする景子の世界。ついに耐えられなくなった祐一が父親を殺してしまってから、世直しのため、包丁を紙袋に入れて街を徘徊する。皮肉なことに、殺した後で被災者の一人・夜野正造(渡辺)が住田の借金を返してしまった事実を知らされる。しかも、夜野が金を手に入れたのは、スリのテル彦(窪塚洋介)と知り合い、闇の金を強奪したのだ。しかもテル彦は相手を誤って殺してしまい、死体を処分するとき夜野をも殺そうとしたため、逆に夜野がテル彦を・・・強奪するときにも部屋に女の死体があったし、もうハチャメチャ(笑)。
結局は父親殺しのことを景子が知ってしまい、自首を勧め、夜明けに一緒に走って警察署へと向かう。清々しい・・・と言っていいのか?