劇場公開日 2011年10月15日

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「三池監督」一命 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0三池監督

2019年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 同一原作に『切腹』がある。 三池監督にもこんな静の作品が作れるんだな!と感心する。出来ればこの路線を続けてほしいものだと願うばかり(笑)。

 瑛太演じる千々岩は妻子のために3両が欲しかっただけだが、武士の面目を重んじる井伊家ではそんな簡単にはいかなかった。望むなら庭先を貸して思う存分切腹すればいい・・・しかし事態はそんな単純ではない。貧困のため刀も脇差も竹みつだった千々岩。家臣の沢潟(青木崇高)はその竹光で切腹させようとしたのだ。なかなか腹に刺さらない千々岩。苦しんでる姿に情けをかけて家老自らが介錯する・・・

 同じように津雲が切腹する前に、彼は沢潟、松崎、川辺に介錯を頼みたいと申し出るが、その三人は姿を消していた。そして、哀れな娘婿、千々岩の話を始めるのであった・・・

 津雲も千々岩もともに福島正則の家臣であったが、主君亡きあとの広島城受け渡しにより浪人となった身。関ヶ原では同じ東軍だったのに!という部分も虚しく響く。平穏な時代がやってきているのに武士の面目だけは残ることがいかに窮屈なことか。現代に置き換えてみても、単なる詐欺にしか思えない行為なのだが、実際に切腹するとなると侍魂がいかに邪魔になるかがわかる。

 津雲が語る千々岩の生活ぶりは哀れでしょうがない内容。しかも孫が死にそうな状況で医者に診せるための3両欲しさに・・・やがて孫は死に、千々岩の死体が届けられたときには妻である美穂(浦島)も自殺。しかし、津雲の復讐心は武士とはなんぞや?と問いかけるような行動。沢潟らを殺すわけではなく、髷を切っただけなのだ。クライマックスでは竹光で大勢の井伊家家臣を相手に大乱闘。彼には相手を殺す気なんてのはないのだ!殺陣もさすがだけど、心にグサッとくるものがある。

kossy