「コンパクトだが中身がギッシリ詰まっている感じの映画」ミッション:8ミニッツ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
コンパクトだが中身がギッシリ詰まっている感じの映画
『インセプション』程複雑では無い。しかしラストの予想不可能で楽しさ8倍!
最近は120分を超える大作が目白押し、しかもその殆んどが長くつまらない映画!しかしこの作品、尺はコンパクトでエコ的だが面白さはダイナミックな驚きのジェットコースター映画だ!
と言ってもこの映画舞台の殆んどが、列車の中の出来事。つまり有る意味での密室劇なのだから、観客を飽きさせない工夫が全編に散りばめられている秀作と言える。
舞台はシカゴ近郊に到着した長距離列車に時限爆破装置が取り付けられる。
そして事故が起きてしまうのだが、その爆破犯人をその列車の乗客の一人の過去の記憶に入り込み犯人を捜査すると言う摩訶不思議な捜査法を行うと言うストーリーなのだ。
やや物語は複雑ではあるが、過去にさかのぼり起きてしまったテロによる列車爆破事故をその事故の発生前の過去に戻って犯人を捜し出し、列車事故発生後である現在以降に起きるであろう、近未来の爆破事件を過去から犯人を割り出し、未然にテロ事件の発生を防ぐと言うものだ。アインシュタインの唱える相対性理論では光速が最も早いと言われていたが、現在では光よりも早い存在がこの世に存在しているだろうと言われ、正確に時間軸はどう存在するのだろうか?量子力学など苦手な私には正直良く理解出来ない分野であるが、割とこの手の作品は昔から多数有るのだ。これらはきっと謎を究明すると言う人間に備わった好奇心を呼び覚ますもののようだ。
実際にこの様な研究開発が何処かの国で、誰かの手により事実行われているのか否かは決して解らないが、好奇心のアンテナが全開する。
この真犯人究明の為に幾度も記憶に戻るので、同じ映像が展開されるのだが、少しずつ変化し続ける状況を見せる事で、真犯人捜査を主人公と同時に観客を巻き込んで行くと言うもので、最後まで目が離せないのだ。デビット・ボーイの息子であるダンカン・ジョーンズと言う監督の前作『月に囚われた男』を未だ私は観ていないが、このD・ジョーンズに私は囚われた男の一人かもしれない。これからの作品が楽しみな監督さんである。
僅か90分の映画で何度同じ様なシーンが繰り返されたのかカウントしていないので不明だが、本当に8分刻みで繰り返されていたのかさえどうでも良い程に気にならなかった。
この映画では列車がシカゴ駅に到着直前に爆破され、シカゴの街中で再びテロ事件の惨事を未然に阻止すると言うものだが、このシカゴと言う都市は私の記憶に間違いが無ければ確か全米一の飛行機の1日の離発着機数が多い空港のある都市だったと思う。
NYで発生した世界同時多発テロ事件から丁度10年目を迎えた今年、あのテロ直後より米軍のアフガン介入に始まりイラク・アフガニスタン戦争で、今年の年末ようやくイラクからの撤退を表明したオバマ政権であるが、テロと戦争の悲劇をこんな形で描く作品も珍しいと思う。
主人公の米軍エリートのスティーブは、幾度となく戦地に派兵するが、最後の派兵となるその前に父と口論したままで戦死した事を知る。
そしてこの列車で過去にさかのぼる過程で、父との喧嘩別れを許して欲しいと友人に成りすまして電話で伝えるシーンが切なくて忘れられない。私も父と死別2日前に口論したままで謝る事も出来ないままに別れた事が20年近く経つ今も悔やまれる時がある。私にもこの映画みたいに過去に戻れるなら、過去で起きた事実をたとえ取り消せなくても、新たに今のこの気持ちを伝える事が出来るならどれだけ嬉しいか!人は身近な人を大切にして生活し、決して照れずに素直に自分の気持ちを速やかに伝え続けると言う事の必要性をこの作品で教わった気がする。明日に延ばさずに、家族に感謝の気持ちを伝えて欲しくなるそんな作品だ。