「私には合わなかったかな。」ミッション:8ミニッツ ドゥルさんの映画レビュー(感想・評価)
私には合わなかったかな。
意外と高評価が多くて驚き。
『映画好きほど、騙される。』というキャッチコピーだったらしいが、騙される要素にあまり衝撃を感じなかった。
最も残念だったのが、背景事情やプロジェクトのメカニズムに関して殆ど説明がなかったこと。主人公の居るカプセル(意識内空間)の閉塞感があまりに強く、逆に、プロジェクトメンバーの背景に関しては殆ど情報が無かった。登場人物の人柄についてあまり認識することができなかった。
列車から降りて救われようとするシーンは印象的だった。なんとかして救われようとする深層心理のあらわれだったのかもしれない。
主人公が感じた「何がどうなっているんだ?」という感覚は強く共感できたが、それが解明されるまでの時間が長くもどかしかった。テロがあるというのは分かっていたが現時点の時刻もわからず、どこまで自体が逼迫しているのかわからない。数度の転送を繰り返して犯人を突き止め、確保までできた。確保したのも道路上だったようで街中というわけでも無い。あそこまで説明を長引かせた意図がよく理解できない。
主人公の意識にも不可解さを感じた。冒頭では拒絶さえして見せた女性に対し、徐々に愛情が芽生えていく。また、軍人ということは(意識の程度を推し量るのは無粋かもしれないが)国のために魂を捧げる覚悟を持つということでは無いのだろうか。プロジェクトのシステムを説明された上でも、「じゃあ自分は死んでいるのか」ということに固執して任務を受け入れようとしない主人公の意思を理解できなかった。
また、最後の8分間が終わらなかった(パラレルワールドで生き続けている?)こともよく理解できなかった。どういうことだ?記憶の世界の筈なのに(それも他人の)、生命活動が停止されても続いている。記憶の中の女性隊員にメールを送る。それは記憶であって決して実在しない筈なのではなかったのか?どうして急にパラレルワールドに迷い込んでしまったのだ?過去を知らない他人と愛を育んでいくのたろうか?自分でなくなった自分で?どうしてそこまて彼女を愛したのか?被害者の記憶に影響を受けたのか?想像はできても情報は与えられない。果たしてどう受け止めて良いのかわからない。
とにかく、私にとっては終始「???」な映画だったのだ。ふわふわした空想世界の話を聞いているようだった。いや、映画とはそういうものかもしれないが。好みの問題なのだろう。
他人に紹介はしてもおすすめはしないかもしれない。
まず何より、「事件を解くために8分間を繰り返す映画」だという情報を鑑賞前に得ていてはいけない作品だと思った。絶対に教えたくない。
【ストーリー】
列車の中で目覚めた軍人の主人公。向かいに座る女性は知り合いのように話しかけてくるが、覚えがない。わけがわからない中、突然爆発が起こり目が覚める。
目覚めたのはカプセルの中。小さなモニター越しに指示を出す女性。わけがわからず取り乱す。
謎のトランプの映像が流れ、女性のことを思い出す。空軍の軍人だ。トランプ映像は記憶を取り戻すプロセスらしい。
『8分間の間に列車を爆破した犯人を見つけろ』
何の為の任務なのか、何の訓練なのか、何もかも不明なまま、また列車に戻され、爆弾を探す。
繰り返される8分間。共に列車に乗ったらしい女性クリスティーナを救おうとするが失敗。犯人だと思い追い詰めたがまったく別の人間で失敗。カプセルと8分間を何度も行き来する。
幾度の転送を繰り返され混乱し、説明を求める主人公に、博士は現在進行されているプロジェクトについて明かす。
既に戦死していた主人公。列車事故で死んだ人間の脳に残った「8分間」の記憶に主人公の意識を転送し、次のテロを防ぐために犯人を突き止めるという任務。
主人公は自分が死んだという事実を受け入れられないが、プロジェクトの責任者である(?)博士は強引に転送を繰り返す。
主人公は任務に尽力し、遂に犯人を突き止める。犯人が逮捕されたことでテロは防止されプロジェクトは成功。
引き換えにもう一度8分間に戻って乗客を救い安楽死を要望する主人公だが、博士は「記憶を削除して安楽死させるな」と…。
しかし女性隊員は主人公の働きをもう十分だと感じ、最後の転送を行って、そっと生命維持装置のスイッチを切る。
主人公は転送された記憶の中で最後の8分間を過ごす。犯人を捉えて爆破を防ぎ、クリスティーナとのキスで8分間が終わる。
…しかしどうしたことか、記憶は終わらなかった。
それどころかクリスティーナと共に列車を降り、コーヒーを飲みに行こうと手を取るのだ。
そして、記憶の世界の女性隊員のもとにメールが届く。
『きっと、うまくいく。』