軽い気持ちでと思ったら、ボディブローが…
「リンカーンと言う車をオフィスにしているからリンカーン弁護士」なんて、パロディチックなコメディ映画かと思って視聴。
スタイリッシュなオープニングと軽いノリで物語は始まる。会話もユーモア・ちょっとどぎつい皮肉を含んだやりとりが軽いタッチで積み重なって…バラエティ感覚の時間を過ごせるのかなと。
けれど、ル―レからの依頼に対して調査が始まると…。意外に真面目に調査する弁護士だったのね。そこからが急展開。
検察側の「これぞ」と自信満々の証拠・証人を、筆舌でなし崩しに論破していく痛快感。でも、裏事情を知っている私ととしては、「それ論破しちゃっていいんかい?」とはらはらドキドキ。ああ、でも最後には、やっぱり悪は裁かれるとスカッとする展開。と思うと、さらにおまけがあって、それっていいんかい。でも背に腹は代えられぬかな。
殺人事件で起訴されているのに、保釈されるんかい?痕跡も全部なかったことにしそうなのに。アメリカって怖い国ですね。
原作未読。かなり端折っているらしい。
だからか、突っ込みたいところたくさんあり。自分の倫理観と合わせると、主人公にそれはこだわるのにこれはこれでいいんかい?と突っ込みたくなるところも満載。
ですが、各人物がそれぞれ魅力的で、テンポも良いので、ま、いっかと惹き込まれます。
主人公ミックとルイス・ル―レの法廷での顔とそれ以外での顔の使い分け。
ライアン・フィリップ氏演じるル―レ。
法廷で証言している時は「こんな純な男性がこんな事件を起こすわけない」と信じ込みたくなるような訴え方しておいて…。自分のしたこと本当に悪いと思っていないんだろうな、楽しみでしかないんだろうな、というその闇が怖かった。
そんなふうな雰囲気出せるなんて。フィリップ氏は『父親たちの星条旗』『クラッシュ』しか知らないけど凄い役者さんです。
あとママゴンも怖かった。気持ちはわかるけどね。だからルイス・ル―レのような闇の生き物が産まれるんだよ。
ミックは信頼できる相棒を殺されているのに、腸煮えくりかえっているのが手に取るようにわかるのに、それを抑えてル―レの弁護をやりぬく。
そんな微妙な雰囲気を醸し出せるなんて、しかも普段は掴みどころのないぬらりひょんのような人物として登場しているのに。凄い。
なんでこれでマコノヒ―氏はアカデミー賞取らなかったのかなんて思うけど、映画が軽いノリに見えていて損していると思います。(『ダラス・バイヤーズクラブ』ではアカデミー賞受賞されています。)
『クラッシュ』『エンド・オブ・ウォッチ』『オデッセイ』でお気に入りのペーニャ氏、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』でよかったレグイザモ氏も出演していてうれしい。
「依頼人の秘密を守らなければ、弁護士資格はく奪される。でも目の前の悪を見逃すのか、という葛藤、しかも自分達にも間の手が迫る」という所で、トム・クルーズ様の『ザ・ファーム』を途中から思い出しました。
映画だけみると法律駆使して大逆転なのは『ザ・ファーム』、『リンカーン弁護士』はお得意先や元妻・普段使っている手法駆使して大逆転といった感じですが、ああ人のつながりって大事ね、とスカッとした映画です。
観て損はないと思います。
(でも、暴力沙汰での解決でスカッとしている私って…うう、葛藤!!!)