劇場公開日 2011年9月17日

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女と銃と荒野の麺屋 : 映画評論・批評

2011年9月6日更新

2011年9月17日よりシネマライズほかにてロードショー

無人の岩山奇景をバックに<ノワール>の原風景が色彩豊かに立ち上がる

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西域的中国、脱時代的極彩時代劇! チャン・イーモウの「女と銃と荒野の麺屋」には友人=石岡瑛子の影響か、背景にターセム的奇景が採用され、その無人の岩山奇景のなかで強烈なコメディのドライブをかけて<ノワール>の原風景を色彩豊かに立ち上げる。

<ノワール>の原風景とは何か? 金はあるが老いた夫、金で買われた妻、麺作りに雇われた若い男(すぐに妻の愛人となる)の猜疑心の連鎖、黒い結末に向かう三角関係の淀みをいう。この3人の他に従業員男女2人の計5人が、孤立した屋敷に住んでいる。この2人も最近は給金の支払いがないため、折あらば金庫から失敬しようともくろんでいて油断ならない。さらに事態をねじれさせるのが、地域の見回り警官の男だ。この警官がもっとも悪党といっていい。

知らずに観ても途中からコーエン兄弟の出世作「ブラッド・シンプル」の巧妙なリメイクとわかる。ニヤリとさせるシーンは多いが、特にクライマックスはまったく同じで、あえて変更していない。よほどチャン・イーモウはオリジナルのラストのギミックが好きとみえる。ただ、水滴を受ける箇所を変更。とだけバラしておこう。これが実に映画的! 魔術的! しかし、あのような僻地で商売が可能か疑わしいが、冒頭、麺屋であることを観客に納得させるべく、従業員3人が小麦粉を練り、空中で曲技団のごとく回転させつつ薄く伸ばし、伸ばし仕上げていく神業はさすが。奇異な味わいながら、小生はこの味大好きである。

滝本誠

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