秒速5センチメートル(2007)のレビュー・感想・評価
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心の動きを詩的に描いた
総合:85点
ストーリー: 65
キャスト: 80
演出: 90
ビジュアル: 95
音楽: 85
世間を揺るがす大きな事件などなくても映画は成立する。花びらが落ちる速度の話をするだけでも、それが特別な時期に特別な相手とならば本人にとっては充分な大事件だ。そんな特別な相手との心の触れ合いと揺らめきが、時には人生に大きな影響を与えることがある。
特に最初の話「桜花抄」は極めて素晴らしかった。まだ何の力もない幼い二人の、精一杯の純粋な想いが伝わってきた。満開の桜の花びらが落ちる様子を見て、その速さを話し合う。そんなちょっとしたことの奥のほうにもそれが心に通じるものがあれば、それが実はとてつもなく大切なんだということを理解させる演出が、美しい絵と共に見事に描かれている。
それは想いの丈を詰めた心を書き込んだ一遍の詩を、純粋な気持ちで見た風景の絵に貼り合わせたかのようである。そんな思いを手紙に託して読みあげるあかりのちょっと幼い感じの喋りかたがせつなくて可愛らしい。
その離れ離れになった二人がまた会うことになったちょっとした旅の顛末が期待と焦燥を駆り立ててくれた。電車が遅れるだけ、たったこれだけの話をこの演出によってどうしようもなく不安を広げてくれた。
だがその後の二人がどうなったのかがわからない。第二編「コスモナウト」になると、二人にはまるで接触がなくなるのだ。まだ高校生の二人にとっては、種子島と栃木は絶望的なほどにあまりに遠い距離。別々の生活が二人に別々の人生を歩ませるのは仕方がないとしても、何故そうなったのかを少しくらいは見せてくれないと、その後の話に繋がっていかない。少なくとも東京に住む大学生になれば栃木なんて日帰りだって出来るし、十分に解決できる距離でしょう。
気になったので後で原作の小説を読んでもそのあたりは書かれていませんでした。まるでSF映画のような風景を背景にした遠い孤独な思いを描いた第二編はそれはそれでいい話であったのだが、最初の話との関連という意味で物語には不満が残りました。それが第三編になるとさらに話がぼやけてしまった。
それでも絵の美しさと心理描写の巧さ、特に最初の話を高く評価して高得点です。山崎正義をはじめとする音楽も、町や自然の音を効果音にする演出も上手。特に第一遍だけでもこの映画は十分すぎるほどに見る価値がありました。新海誠という新鋭の偉大な才能に巡り合うことが出来て良かった。
若い頃の忘れられない恋
あるある、若い頃の忘れられない恋愛って・・・
この主人公も相当引きずっていますね、観ていてこっちも辛いです。
映像が綺麗です。鹿児島の空とか海、宇宙みたいな夜の空とか。
何度も観たくなる映画ではないですね、結構面白かったけど。
ココロの「繊細」を感じる
新海誠つながりで「ほしのこえ」の次に観た作品。連作短編だから、3つとも別々の物語なんかな〜と思ってたら、3つで一つの作品になっていて驚いた。
①桜花抄
いきなり冒頭で「桜の花びらの落ちるスピード」が毎秒5センチメートルだと知って、ちょっと面食らった。普通は最後のほうになって、タイトルの意味が分かることが経験上多かったから。
本当にこの二人を見ていて、いいなぁって思った(「羨望」じゃなくて(笑))。明里、4時間以上も待つとは・・・。
手紙で「桜の木を見せたい」と明里が書いていたが、実際には豪雪の真冬。でも、雪もあたかも桜の花びらのようにやさしく降ってくる。
余談だが、栃木出身の身として一言。そんな「遠い」だなんて言わんといてください!上野から宇都宮まで新幹線で40分くらいだし、20年近く住んでいますが、在来線が2時間以上ストップする(しかも何にもないところで!)なんてことは一度もあった記憶がないです・・・。東京から100kmしか離れてないですよ!
②
分かってほしいのに分かってくれない。人は思ってほしいように思ってくれない存在なのかも。結局自分は何もできていないんじゃないか。何も分かっていないんじゃないか。そう考えると自分に腹が立つし、やるせなさを感じるときもあると思う。が、「相手に認めてもらえない」そういう経験をしたことも、きっと価値あることであるはず。
③
短いが、全てを説明しているのは見事。結局、大人の世界は二人を引き離してしまった。これでいいのか、そしてどうすべきだったのか。その答えは誰にも分からないと思う。
余計な知識はいらない。二人の有り様をありのままに感じてあげる、そんな見方もいいかもしれない。
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