「あかりを夢に置き換えると共感できる」秒速5センチメートル(2007) movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
あかりを夢に置き換えると共感できる
告白が全てではないけれど、たかきもあかりもかなえも、最善策として言わずに断ち切る事を選んだはずが、
一生心に後味苦めに残るのだろうな。
スマホなくとも上の世代の人間達は、距離が離れてもうまく相手を思いやり心を通わせて次世代に命を繋いできている。たまたま不器用な3人が集まってしまったのではないかな。
東京で同じ中学に通うために合格したはずが、雪が深くなる栃木に引っ越すことになって先に離れたあかりは、先に絶望を経験したが自分なら何通もたかきに手紙を書いて再会を実現させた。
たかきが鹿児島に引っ越すことになった時、今度はたかきの番なのではないかと思ったが、たかきもあかりも、今度はそう簡単に会えなくなるねと最後を感じてしまう。
その後ずっとあかりとの過去にとらわれてたかきは青い鳥状態なのに。
そのたかきを見て、親しくなっても決して自分に向かない目線に、辛くなるかなえ。かなえは高校はたかきと同じにするため頑張って受験し合わせたが、高卒後は進路が定まらず、サーフィンを高3で始めて毎日海でぼんやりして過ごしている。
かなえとたかきがロケット打ち上げを目撃する場面、
かなえは波に乗れた今日告白しようと考えていたがいつまでも言い出せず、結局ロケットのとんでもない轟音に全てかき消されてしまった。
自分の意思で関わる人の意思確認をして人生を舵取りできず、止まってしまっているたかきとかなえを象徴するようで真反対に、ロケットは宇宙の真っ暗闇に留まるのではなく闇を切り裂いて進んでいく。
あかりも、そうだったのではないかな?
離れたたかきを追える歳ではなく、栃木で雪深い闇の中を歩んで、それでも闇をかき消して未来を切り拓いていき、別の男性との結婚を選んだのではないか?
たかきは手紙なくともあかりを片隅に東京に進学し、疲弊するIT職で心を壊したようだが、頑張って歩んだ先にあかりではない交際相手?からも別の人との結婚のメールが届いた。
通じ合うには会話が必要。
メールもできるのに。
書いた文を送らず保存し続けるたかきの心情は、家族も友達もかなえもあかりも、誰も知らぬまま。
言わないと伝わらないよ、そのために人間には言語能力があり文字で会話がなくても伝えられるのだから。
そのようなメッセージを受け取った作品。
人間関係より、あかりを夢と置き換えた時に、わかる人も多いんのではと思った。幼い頃はただただ好きで、なりたかった職業に中学生頃、その職業に就いている人から実際に話を聞くとそこで嬉しいと同時に圧倒的難関を感じてしまい、今までより遠い存在に心理的距離ができてしまう。進路を決める頃までまっすぐその夢に突き進めたら良いが、なんとなく諦めて、夢は夢として蓋をして、手っ取り早い選択肢から進路と仕事を決めてしまう。叶わぬ夢はずっと心に残るのに。ロケットの場面も、宇宙飛行士という圧倒的になるのが大変な職業が近くて遠い種子島で高校生活を過ごしたら、どんな進路になるのだろうな?そんなことを考えながら見た。
男性は恋愛ごとにフォルダを分けて保存、女性は上書き保存、こんなことをよく聞くが、その通りなのだろう。
