「何がしたかったのか…。」47RONIN とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
何がしたかったのか…。
日本に興味を持って、日本テイストの映画を作りたかったというのはわかるのだけれど、何もかもが中途半端。
物語、演技、演出、映像…。
映像はCG多用でド派手で綺麗。
殺陣も、棒切れ振り回しているみたいな刀遣いはあるけれども、肉弾戦も交えて、かえって実戦の迫力を出してくれる。それでいて、舞を見ているようなきれいなシーンも。真田氏がアレンジしたのかな?
それでも、それらが物語と絡んで”映画”として興奮させない。あくまで、配信動画のシーンを見ているよう。
惜しい…。
いっそのこと、舞台設定もSFか異国かに、俳優陣も日本人ではない人々で、作り変えてしまってくれた方が楽しめた。
監督、役者、美術等、制作にかかわる人々のインタビュー動画を観れば、一生懸命に日本のことを調べて、アレンジしてくださったことがわかる。それには、感謝。
でも、日本人から見たら、外しているんだよな。(私だけ?)
王が仁のある政治を行うときに現れる神聖な生き物とされる麒麟(by『礼記』)を殺しちゃまずいだろう。いや、そんな瑞獣を殺したから禍がやってきたという前振り?
武士道通す武士の家で、家長がいる前で、立て膝でご飯を食べるなんてありえない。不作法な、下町のちゃぶ台でならあるけれど。
将軍の前で突っ立つな主税!まあ、その辺の作法は、今の日本の若者も知らないからしょうがないけれど。
恩義を感じて、恩ある人の為に命投げ出すって、別に武士道ではないし…。
いっそのことカイと姫のロマンスを軸にすれば良かったのに。
主従関係が描けていないから、主君の仇と言われてもね。
害をなした魔物を成敗しにいったように見える。
元々の『忠臣蔵』を成立させている前提がない。(日本人ではないので当たり前だが)
単なる忠義だけで討ち入りに行ったわけではない。忠義を期待する世間の眼というプレッシャー。再就職という道はほとんど皆無(女は二夫にまみえずと同じように、主君を変えることへの偏見…。ましてやお取りつぶしに合った家の家来という偏見)。今の日本ではやりの「ありのままの」ではなく、”役割=世間から期待される自分”を生きていた人々(そしりへの恐怖)。
物語『忠臣蔵』として形が作られる後世の世間全体に鬱屈していた幕府への不満が、仇討ちを煽ってもいた。
日本の忠臣蔵関連の物語は、講談等のスピンオフも含めて、各浪士や、それを助ける人々の、命や立場をかけた苦渋の決断の話が前提。もしくは、敵討ちをさせまいとする吉良側と敵討ちしたい大石側の攻防が多い。
そこらへんの人間ドラマを描いていないから、とっても薄っぺらく思えてしまう。
もしくは、忠臣蔵から離れて、カイを主人公にして、奴隷から仲間に入れてもらう復権のプロセスがもっと描かれていたら、重厚なドラマになったのだろうが、非常に表面的にしか描かれない。
役者では、真田氏が圧巻。
『るろうに剣心』を観ちゃうと、浅野さんと真田さんの殺陣より、田中さんを吉良にして、田中さんと真田さんのガチ対決の方が観たかったような。
(田中さんは本来舞踏家だけど、真田さんも日本舞踊の名取だから、殺陣も舞踊のように綺麗で迫力あるだろうと思う)
まあ、あえて泥臭くを狙ったのだと思おう。
同じ日本を扱ってる映画なら『ラストサムライ』の方がまだ日本の精神を描こうとしてくれている。
でも、観るべき所が全くないわけではないので☆2つ。
続編が作られるとか。
主人公を含め、主要人物のほとんどが死んでいるのに、どういう話になるのだろう。
主税が主人公?
吉良やミズキ、カイが復活?
見たいような、怖いような…。