劇場公開日 2013年12月6日

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47RONIN : インタビュー

2013年12月4日更新
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キアヌ・リーブスが称賛する、ハリウッドデビューした柴咲コウの魅力

西洋の異端の者と領主の姫とのかなわぬ恋。米アクション大作「47RONIN」には、「ロミオとジュリエット」をほうふつとさせるラブストーリーが重要な横軸として流れている。担ったのは主演のキアヌ・リーブスとハリウッド映画初出演の柴咲コウ。もちろん縦軸としては、日本の殺陣を基本としたド派手な剣劇アクションが全編を支配。2人の悲恋は、それだけにとどまらない切なくも華やかな彩りを加えている。(取材・文/鈴木元)

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リーブス「結ばれない恋って、ロマンティックだから大好きなんだ。現実には悲しくてつらいけれど、フィクションだから素晴らしい。そういう恋をするというのは、ひとつの理想だと思うよ」

柴咲「全く同意見です。会えないというフラストレーションが、見ている人の刺激になると思うんですよね。だから、撮影も想像力をかき立てながらやっていました」

ベースとなる「忠臣蔵」には本来、主要人物の中に女性は登場しない。だが「47RONIN」では、柴咲が演じた赤穂藩主・浅野内匠頭(田中泯)の娘ミカの存在が、浅野に命を救われた主人公のカイ(リーブス)をはじめ、あらゆる形で影響を及ぼしていく。

当然、リーブスが四十七士の物語を知っているはずはないが、子どもの頃からアジアには興味を持っていたという。今年、種田陽平が美術監督として参加した中国ロケのカンフー映画「Man of Tai Chi」で監督デビューもしている。

「自分でも不思議だと思うけれど、自然に対する感性や、自然との関係性に関心があったんだ。この話も、シナリオが来るまでは全然知らなかったけれど、国が滅び追い出されて居場所を失った浪人たちが、それでも名誉を重んじて犠牲を払って戦っていくところが気に入った。特にキャラクターでは、大石(内蔵助)が非常に面白いと思ったんだ」

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内蔵助を演じたのは真田広之。言うまでもないが、日本を代表する国際派俳優であり、2003年「ラストサムライ」ではエドワード・ズウィック監督に「影の監督」と言わしめたほど時代劇における第一人者である。当然、リーブスも真田を通して武士道精神を学び敬愛の念を抱いている。

「本当に尊敬している。名誉や犠牲、敬意がサムライ精神だと頭の中では分かっていても、真田さんを見ているとそれ以上だからビックリする。彼は役の上だけでなく、普段からサムライそのもの、いつも撮影現場をグルグル回って、何か問題があるとすぐに行って『こうしたらどうか?』といったアドバイスをしてくれる。つまり物事を収める精神がすごい。まさに、大石だね」

その成果がいかんなく発揮されているのが、もちろんアクションシーンだ。吉良邸討ち入りのクライマックスをはじめ、長崎・出島でのカイと内蔵助の一騎打ち、巨大な獣狩りなど、日本の殺陣に敬意を払いつつ、広告業界で鳴らし今回が初の長編映画となるカール・リンシュ監督のイマジネーションを具現化した迫力の映像に目を奪われる。リーブス自身も鍛錬を重ね、独自の工夫を重ねたと強調する。

「もちろん、伝統的な刀の持ち方や振り下ろし方は学んだよ。その後で、グリップ(柄)を横手にして持ったり、1対1の戦いではパンチやキックを繰り出すといった格闘技の要素も取り入れ、すべてをまとめてやろうとしたんだ」

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実際にパンチやキックの身振りを交えノリノリで説明したのは、余程手応えを感じているからだろう。一方の柴咲は、プリンセスのため主要キャラクターの中でアクションがほとんどない。そのあたり、物足りなさは感じなかったのだろうか。

「リアクションと逃げるということしかなかったけれど、ちょっとだけ吉良に短刀で対抗するシーンがありました。それだけで筋肉痛になりましたけれど(笑)」

そこでリーブスが、「あの短刀の動きは速かった。とても刀の使い方に慣れていると思った」と絶賛。2人は当然、初共演で、しかも大人になるまでは離れて暮らしながら互いにほのかな思いを募らせ、ミカは浅野家断絶の後、喪が明ける1年後に吉良上野介(浅野忠信)との婚儀を言い渡されるという設定。そのため共演シーンはそれほど多くないが、その才能を高く評価している。

「プロフェッショナルで技術もしっかりしている。コメディ、スリラー、アクションでも、なんでもできる女優さん」

これには「優しいですね」とはにかみながらお礼を言った柴咲。ミカ役はオーディションで勝ち取り、リンシュ監督からはキャスト発表の際、「オードリー・ヘプバーンのような輝きがある」と絶賛された。

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「会見だから、大きく言ってくれただけです。でも、彼も長編は初めて、私もハリウッド映画は初めてという中で出会えたので、すごく新しいものが生まれるんじゃないかという期待もあったのかなと思います」

ただ、全編英語のセリフなど初めてのことばかりで、撮影は試行錯誤の連続だったようだ。

「毎日毎日、やりたいこととやれることのギャップを感じながら、本当はもっといっぱい出そうと思っても今の自分にはそれしかできないジレンマ、はがゆさみたいなものがありました。セリフも発音がうまくいかないなど大変な部分があって、毎日反省していました。だから(撮影が)終わるという時には寂しかったですね」

そして、リンシュ監督に導かれた部分は大きいと話す。昨今、プロデューサーや監督業に積極的なリーブスも今回は俳優に専念し、日本史にハリウッドの最新技術を融合させた新たな才能に賛辞を惜しまない。

「カールが監督に決まる前から、僕のところに出演オファーが来ていたんだ。でも、初めてのミーティングで彼がこの映画化にどれだけの情熱を持っているかが分かったし、ビジュアルの世界観がすごいから信頼できると思った。それくらい深入りしていた企画だったから、僕たちは監督のビジョンに従うだけだった。ただし、主役は僕じゃなくて、大石だけれどね」

冗談めかしながらも日本への敬意をにじませニヤリと笑ったリーブス。加えて「47RONIN」は、日本が世界最速公開となるが「正しいことだし、そうあるべきだと思う」と断言した。その合戦の火ぶたは、12月6日に切って落とされる。

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