「楽しめはしたけど・・・・」ダークナイト ライジング 生十六茶さんの映画レビュー(感想・評価)
楽しめはしたけど・・・・
傑作ダークナイトの続編ということで、期待値MAXでIMAXシアターに行ってきたのですが、総評すると期待はずれ。脚本が杜撰でどうにも話しに入り込めませんでした。
深刻ぶってるだけで、実際はぜんぜんリアルじゃない荒唐無稽な話だよねーってのは前作でも言えることではあるのですが、前作は説得力のあるはったりが抜群にきいていました。
脚本だって完璧!なんて言えるものではなかったですが、ヴィランがジョーカー(何をやってもおかしくない脚本的に反則キャラ)でしたし、細かい演出が秀逸だったこともあり、上手いこと誤魔化されて心地よい「リアルっぽいヒーロー映画」を楽しむことができました。
一方今作。
まずはヴィラン。ジョーカーの後釜ということで大いに不安だったんですが、ベインはいい意味で期待を裏切ってくれました。
頭脳+筋肉で、バットマンは直接対決でも間接的にも徹底的に痛めつけられます。ゴッサムの支配が完了したあたりの絶望感は凄いものがありました。真っ向勝負でバットマンをねじ伏せてくるその姿はラスボスに相応なものだったのですが・・。
その分最後の唐突などんでん返しは本当に最悪でした。このおかげで脚本の整合性もめちゃめちゃ。
複線を積み重ねて積み重ねて最後にやられた!ってなるものじゃないと駄目とは言いませんが、どんでん返し前の描写どころか、後の描写ですらひたすら薄い。
脚本として最後に思いたから何となく付け加えてみました以上のものが感じられませんでした。
このおかげでベインは小物化しちゃいましたし、一気に白けてしまいました。ただ、自分は「ビギンズ」未見なので見たら大きく感じ方が変わるのかも知れません。
他にも粗さが目立ちました。一番気になったのがベインの「この平和は嘘の上のものだったんだぜ!」演説のあたり。仮にもベインはテロリストの極悪人です。いくら民衆が流されやすいって言ったって、下層階級の人間の鬱憤がたまっていたって、あんなに全力でヒャッハーしないでしょうよ。
そして、最大のクライマックスといっていいバットマン&警官隊 VS ベイン軍団の大激突。
ショットガンだの拳銃だのでフル武装しているプロ集団同士の戦闘は!・・・・・・・正面から全員で突撃してステゴロ。
いやー爆笑しました。でもここのバットマンリベンジマッチは素直に燃えたので良しとしておきます。
ここまで不満ばっかりタラタラ言ってきましたが、楽しめなかったわけではありません。正直バットポッドの横回転を大画面で見ただけで元取った!って思いましたし、予算かかってるだけあって映像はド迫力でした。包囲したとおもったらザ・バットで空飛んで逃げられて警察ポカーンなシーンとかもう最高です。
アクションシーンがとにかく多く、エンタメ分だけで十分おなかいっぱいになれました。脚本さえ気にしなければ、ポップコーンムービーとして秀逸な出来だったと思います。あと、最高なセリーヌカイルは最高にセクシーでキュートで最高です。本当にありがとうございます。
しかし、ノーランバットマンの集大成としては、エンタメだけでは大いに不満なのです。個人的にはあの「リアルっぽいヒーロー映画」が見たかった。ノーランに騙されて世界観に没入したかった。
この長時間を苦も無く見ることはできましたし、満足度は4点つけてもいいくらいなのですが、心情的に-2して2点ってことで。