劇場公開日 2012年8月10日

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トータル・リコール : 映画評論・批評

2012年8月7日更新

2012年8月10日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

よりリアルになった近未来描写とスリリングなアクションで魅せる娯楽作

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極めてアクの強いポール・バーホーベン作品のリメイクで心配したが、SF映画の数々を連想させながら格段にリアルになった近未来描写とアクションで魅せる娯楽作に仕上がっている。

舞台は地球のみに変更されたが、居住可能な地域は、支配層が住むブリテン連邦と労働者が暮らすコロニーだけという設定がユニーク。両地域は地球のコアを貫く巨大なエレベーターで繋がれ、毎日これに乗ってコロニーの労働者はブリテン連邦に通勤する。こうして2種類の近未来都市を、警察組織から逃げながら自分の正体を捜す主人公ダグのスリリングなアクションと共に体感できる仕掛けだ。

猥雑で雨が降っているコロニーは「ブレードランナー」の趣。ブリテン連邦は、超高層ビルの狭間にホバーカーのハイウエイが何層もあり、「フィフス・エレメント」を思い出す。そこで、「スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃」のような目も眩む空中カーチェイスが繰り広げられる。さらに、前後左右にも移動するエレベーターを使ってのピクサー・アニメを実写化したようなアクションもあり、息を呑む。

バーホーベン版へのオマージュも楽しい。ダグの変装に絡み、バーホーベン版で印象深かった大柄女性が登場し、同じセリフで観客を惑わす。ダグの発信機は、鼻の穴から取り出す球体から手に埋め込まれた携帯電話に変わり、多彩な機能で目を奪う。また、レジスタンスとして立ち上がったダグが、「これはリコール社が植え付けた嘘の記憶」と説得される名シーンも健在。“冷や汗”とは別の液体が鍵となり「そうきたか!」とうれしくなる。

ただ、この「自分という存在の不確かさ」という原作者フィリップ・K・ディックのテーマは、バーホーベン版の方がより深く描かれていた。

山口直樹

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