「2D を観て、3Dも観たい完璧な作品」ヒューゴの不思議な発明 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
2D を観て、3Dも観たい完璧な作品
邦題の「これはお子様映画ですよん」と言わんばかりの題名は、この作品にはそぐわないと思います。
主人公たちはなるほど子供かも知れないが、大人も唸る感動の名演技を見せてくれているからです。
原作の原題が「ヒューゴ・カブレの発明品」だったのに、映画の題名が「HUGO」となった経緯は、私は知りません。
しかし「HUGO」というのは、映画が好きでたまらない大人のための映画であることを示唆する良い題名だと思います。
なぜ日本でも、ヒューゴという題名で公開しなかったのでしょう。
それはともかく。
駅。
そして圧倒的な人混み。
この二つこそが映画の原点です。
事実、1895年にフランス人のリュミエール兄弟が誕生させた世界初の映画は、工場の正門から労働者がうじゃうじゃと吐き出されてくる映画「工場の出口」でした。
そして初めて有料公開されたのが「シオタ駅への列車の到着」でした。
本作の中ではただひたすら群衆の人混みの中を主人公が駆け回ります。
そして、突っ込んでくる汽車への恐怖という重要なモチーフが2度登場しますが、あきらかに後者へのオマージュです。
7年後、現在の「ドラマとしての映画」の元祖『月世界旅行』がフランスで制作されます。
監督はジョルジュ・メリエス。
そう。本作でも実名で登場し、重要な役回りを演じている人です。
本作を観て、しみじみと再確認させられました。
映画というのは、大成功した作品だけではなく、結果としてどんなクソ映画に終わった作品であっても、制作に関わった人たちはみんな一人残らず、観客の喜ぶ姿を見たくて映画を作って来たんだよなという、ごく当たり前の事実です。
観客の喜ぶ顔を見たいと思って、工夫に工夫を重ね続けて100年。
努力の蓄積によって、映画はついにこの天空の水準にまで到達したのですね。
その歴史を思う時、感動が胸に込み上げる作品でした。
なお、お子さま方からは、イマイチだという反応も耳にしました。
そりゃそうでしょう。
これは歴然とした大人の映画。
お子様には理解できない映画だろうと思うのです。
主人公が子供だから安直に子供映画として宣伝して子供を呼ぼうと思うような、日本の映画業界のスケベ根性こそが日本の映画界をダメにしたのだな、ということも、フと思わされたことでした。