「賛否両論のラストは必然です」アントキノイノチ electric sheepさんの映画レビュー(感想・評価)
賛否両論のラストは必然です
ホントに期待しないで見に行った映画ですが嬉しい誤算でした。見たい度(3.3)と評価(3.5)が逆転(20011/11/20 20:29)しているのも納得の映画です。
タイトルの安直さと原作が純粋な作家/脚本家ではないという点から、今一感は覚悟していたのですが、さだまさしのクレープ時代の「精霊流し」の繊細さに唯一期待しての鑑賞。まさにどんぴしゃでしたね。極端に「地味」な映画ですが、その分記憶に残る映画です。
この映画の特筆する点は主人公に吃音があり、その言葉やその情景を大事にするために、不要な効果音や音楽を極力排除しているところです。結果的に、台詞の一つ一つが重くて大事なメッセージになっています。遺品から生きていた証拠を探る、ある意味、死から生を後方視的に探るというやり方は、医療ドラマの真逆であり新鮮でした。会社名の「クーパーズ」はひょっとすると外科用のはさみ(クーパー)からきているのかも。
遺品からその人の生きているところを想像しなくてはいけない「遺品整理」はある意味、非常に疲れる仕事でしょう。主人公の長島はそのあたり熱演されています。遺品整理を他人にゆだねる事は、時に死んだものに対する「怒り」がある場合があるのですが、そこで「許すこと」を獲得していくすばらしさがこの映画にはあります。「命はつながるもの」というテーマが出ていますが、残されたものが失った大事な人の記憶を整理することがつながる事のいみかと思います。
ラストの久保田さんの死に関して賛否両論なんですが、これは「生前の記憶のあるものが遺品という物質とそれにまつわる記憶の整理をする」という、ある意味「家族」の辛い仕事を示唆したものです。これはさだまさしの「精霊流し」なんですね。