生き残るための3つの取引 : 映画評論・批評
2011年4月26日更新
2011年4月29日よりシネマート新宿、銀座シネパトスほかにてロードショー
三すくみ、四すくみの中で二転三転する筋立ての面白さが抜群
無茶苦茶としか言いようがないほどパワフルな映画だ。不正と利権の癒着が横行する権力機構が舞台だが、社会悪の告発ではなく、少しでも権力に近づきたい男たちの欲望のドラマだ。悪いヤツはどこまでも悪く、善いと思っていた男も結局は泥まみれ。スピーディーな展開と思い切りの良い編集で渦巻く熱気の中に一気に取り込まれてしまう。
面白いのはこの映画に出てくる人間たちがみんな誰かの弱みを握り、同時に誰かに弱みを握られていること。実力はあるが学歴もコネもない刑事は、昇進をほのめかされて女児連続殺人犯を捏造。片棒をかつがせたヤクザの土建屋に、不正入札捜査の目こぼしを強要される。土建屋と敵対する大手不動産屋は検事と癒着。賄賂を受け取っている検事は、刑事と土建屋の関係を嗅ぎ回るが、逆に癒着の証拠を握られるという具合。そんな状態で全員が我を押し通すのだから結果は当然足の引っ張り合いだ。
上の者は必ず下の者をいじめ、弱い者はこらえきれず強い者に噛みつき、使える力は全部使って、生き残るための闘争に突っ込んでいく。三すくみ、四すくみの中で二転三転する筋立ての面白さが抜群だ。脚本は「悪魔を見た」のパク・フンジョン。何を言われても柳に風で受け流す検事の部下や、刑事を慕う捜査官など、サブのキャラクターの描き分けも上手い。
(森山京子)