「おばあちゃんは、息子さんを郷里に置き去りにしたんですよね」わが母の記 shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
おばあちゃんは、息子さんを郷里に置き去りにしたんですよね
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「映画「わが母の記」(原田眞人監督)から。
映画ファンとしては贅沢なことに、ロケ地があまりに身近すぎて、
「えっ? ここ、湯ヶ島じゃない、中伊豆のあそこかな」とか
「あっ、この場所、行ったことある」「この伊豆弁、変だろう?」・・
いつもと違った映画鑑賞の視点に、やや違和感を感じながら観終わった。
帰宅して、暗闇の中でメモした手帳を整理していたら、
主人公のほんの小さな心の変化(これも違和感)に気付いた。
役所広司さん演じる、主人公・伊上洪作が、
樹木希林さん演じる、母・八重に語りかける呼び方である。
冒頭「おふくろ」(「お母さん」)と呼んでいたのに、
作品のある場面から「おばあちゃん」に呼びかけるようになる。
私が、普段、何気なく母親に声を掛ける時、(特にふたりの時は・・)
「おふくろ」とか「お母さん」と口にしても「おばあちゃん」とは言わない。
それこそ、違和感があるから。(息子にしかわからない感覚かも)
だから「祖母」という意味の「おばあちゃん」ではなく、悲しいけれど
単なる「高齢者の女性」という意味の「おばあちゃん」として使い、
それでも一所懸命に話しかけている姿に、心が震え、涙腺が緩んだ。
自分の母親が記憶をなくしていき、息子のことも忘れてしまう現実、
それをどう受け止めて、周りの家族に悟られないように、
母への想いを持ち続けていくか、大きなテーマであった気がする。
孫が祖母を「おばあちゃん」と呼ぶ感覚とはちょっと違う、
息子が母を「おばあちゃん」と呼ぶ感覚は、心が痛む。
いつまでも「おふくろ」(「お母さん」)と声を掛けたいものである。
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