「落語×映画のイリュージョンの融合=板尾ワールドの大乱射」月光ノ仮面 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
落語×映画のイリュージョンの融合=板尾ワールドの大乱射
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終戦直後の混乱期に伝説の天才落語家が記憶を一切無くし、別人のように帰ってきた事で寄席連中が疑心暗鬼に陥るサスペンスタッチの物語。
メインテーマの噺である『粗忽長屋』は、行き倒れになった死体を俺だと名乗る人間が引き取りに来る奇妙奇天烈なストーリーで、戦争で生死をさまよった人間の狂気を巧みに照らし合わせ、不思議な見応えを産む。
板尾は落語家でありながら、台詞らしい台詞を一切言わないし、唐突にドクター中松が乱入するetc.設定を無視した世界観作りに違和感に戸惑う。
戸惑いに慣れた頃、衝撃のサゲに脳髄をぶち抜かれる。
散々引っ張っておいて卑怯やと怒りたい気持ちも威勢よくぶち抜かれ、まあイイやと笑ってしまう。
故・立川談志師匠は粗忽長屋を「落語というイリュージョンの極地の一つ」と評し、愛していた。
オチはあるけど、答えはない。
今作の狐に摘まれたような唯一無二の後味に、板尾ワールドが落語のイリュージョンを見事に継承しているような気がした。
では、最後に短歌を一首
『帯なぞり 指と唇 解くうさぎ マクラすり替え もぐらの飛沫』
by全竜
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