大鹿村騒動記のレビュー・感想・評価
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舞台に上がるのは逃げているのではない。戦っているのだ。
痴呆の進む妻に振り回され、家庭も仕事もつまづきっ放しの日々に憤慨し、歌舞伎の舞台が唯一、日常から解放できる世界だと生き甲斐を見いだそうとする。
そんな不器用な男を渾身の演技で表現する原田芳雄の牽引力に終始、魅力され、笑顔と涙が溢れるひと時であった。
苦悩する主人公を尻目に飄々と過ごす岸部一徳&大楠道代の当事者コンビのノンキな滑稽ぶりが、悲惨な状況を和らげ、笑いを誘うから何とも皮肉である。
だからこそ、村人達は歌舞伎の成功を目指し、一丸となっていく。
様々なトラブルに七転八倒する主人公達を役場職員の松たか子や役者仲間のでんでん、石橋蓮司etc.が優しく見守り、交流の輪が築いていく。
荒々しい口調でも根強い絆が伝わってくるやり取りにコミュニケーションが希薄な今、なおさら人情の味ってぇヤツが恋しくなる。
歌舞伎の舞台上でしか真っ当に意思疎通ができない夫婦は、残酷なのに妙に微笑ましく、不思議な2人の距離感が、メインの大鹿歌舞伎へと繋がっていく。
ゼンさん、お疲れさんでした。
そして、ありがとう。
原田芳雄さんの復活と感謝の願いを込め、最後に短歌を一首。
『鹿泣いて 帰る嵐の 舞台でも 千両役者は 幕を降ろさず』
by全竜
名優たちが魅せてくれる!
原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、石橋蓮司、でんでん、そして三國連太郎…挙げたらキリがないくらい贅沢過ぎる豪華出演者たち。
普段ならベテランの佐藤浩市が若造に見えるほど。
やっぱり映画は役者の演技を見る為にある。
どんなにCGが発展しても、生身にはかなわない。
そこに、阪本順治の見事な演出、荒井晴彦の優れた脚本が加わり、映画本来の面白さや魅力を堪能させてくれる。
今年の夏は「ハリー・ポッター」や「コクリコ坂から」などが話題を呼ぶだろうが、そんな中で、ひっそりと熱い支持を集めそうな気がする。
きれいな自然が一杯の空気感!
村の人々の熱意がじかに伝わってきました。
伝統ある地方歌舞伎への思い入れがエキサイトし はっちゃけた。
主役の原田さんの、心の入れ方が熱い。
村と映画集団が溶け込んだ「素朴な賑わい」が見え、南アルプスの空気感が澄みきっている。
女優陣の「手がたく、かしこそうな安定した演技」には安らげる。
まるで観客も 撮影キャンプに参加できているような触感だった。
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