「人間の悲しい性と、それを乗り越える力」マイウェイ 12,000キロの真実 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の悲しい性と、それを乗り越える力
前半は日本人の描写に嫌悪感を覚えるが、朝鮮を占領下に置いた時代、実際あんなものだったのだろうという想像はつく。もっと酷かったかも知れない。それでも、見ていて気持ちのいいものではない。
とくに日本兵の野田が酷い。よりによって山本太郎だ。そもそもこの役者、生理的に受け入れ難い。
この作品が、日本国と日本人を一方的に非難した映画かというと、そうではない。極寒のソ連で重労働に明け暮れる絶望の日々、同じ捕虜になりながら、日本人と朝鮮人の形勢が逆転する。朝鮮人もまた、暴力によって日本人を従わせようとするのだ。ここでは、人間が奥底に持つ不変の悲しい性が感じられて悲しい。
それでも、敵意を持っていた辰雄とジュンシクの間に少しずつ互いを理解しようとする気持ちが芽生え、薄ぼんやりとだが小さな光が見えてきたのには、人間の前向きな発展性が感じられて嬉しい。
この二人を極限状態まで追い込む戦闘シーンは、結構、迫力がある。「プライベート・ライアン」や「硫黄島からの手紙」ほどの痛さはないが、カメラワークが多彩で臨場感がある。VFXもなかなかのデキだ。ノモンハン、ジュコーフスキー、ノルマンディーの3つの戦闘シーンは、どれもよくできているが、中でもノルマンディーの爆撃シーンは迫力がある。
ファン・ビンビン演じる美人スナイパーの登場はご愛嬌だが、日本人と朝鮮人の友情ドラマと戦争スペクタクルのミキシングも丁寧だ。
辰雄たちがソ連での極寒のなか重労働に耐える姿に、終戦したにも関わらずシベリヤに抑留された日本の人々が重なり、その苦労や無念さがどれほどのものだったかと思うと辛くなる。終戦で帰国の期待を満載して東に進んでいた列車が、突如、西に向かい始めたという。民間人も含む100万人あまりが強制労働に就かされ、30万人以上が亡くなった。
ノルマンディーで、はるか遠くの祖国に繋がる海の彼方を見つめる辰雄が印象的だった。