「ハガネの絆」リアル・スティール カバンさんの映画レビュー(感想・評価)
ハガネの絆
人とロボット、そして人と人の絆を力強く描き出したこの映画。沢山笑えて、時々ホロッとさせ、胸が熱くなり、とても感動しました。
ボクシングの観客たちが無限の暴力性を求めるようになった結果、人間のボクサーが弾き出され、ロボットがそれにとって替わった近未来。
このストーリーの主人公チャーリー、最初は最低オヤジに思いました。賭けをトンズラし、借金まみれで細々とロボットを引き連れるボクサー崩れ。もうひとりの主人公、過去に捨てた息子・マックスの存在を知ると、マックスの叔母夫婦に親権を金で取引しようとする悪賢さ。まさに、軽蔑されて然るべき存在ではないか。
しかし、親子で過ごす2ヶ月の間、互いに冷たい眼差しでギクシャクしていた関係に少しずつ変化が…。そのキッカケが、マックスを救ったATOMとの出会いです。
シャドー機能を搭載したATOMにマックスは心を開き、チャーリーも息子とロボットの姿に触発され、過去の輝きをATOMに投影させていきます。ここで、マックスがDr.ペッパーを何本も開けながらATOMを改造し、一緒にダンスをするシーンがとても笑えました。
チャーリーの技術とマックスの賢さがATOMを増強させ、善戦を重ねていくのだが、ある事件から親子の別れが否応なしに迫ってきます。叔母夫婦に引き渡す際に、チャーリーがかつて要求していた大金を跳ねつけた所からも、チャーリーの心の成長が感じられました。
一度切り離してしまった絆だったが、たどたどしく、また一緒に戦おうとマックスに説得するチャーリーの姿には、ウルウルしました。
そして、無敗の王者ゼウスと臨む最後の戦い。ズタズタにぶちのめされるATOMとチャーリーとマックス。劣勢な状況から、相手に対して渾身の一撃に導いたのは…。
━━最終的には負けてしまいましたが、感動的で逆に良かったと思います。眩いスポットライトを浴びてフェードアウト。その先、親子には?想像が膨らみます。
ATOMを介して、息子が父の偉大さを実感する過程が丁寧に描かれていて、最後まで楽しめました。ATOMの拳も親子の絆も、まさにタイトル通り“真実のハガネ”です。
また、所々“日本LOVE”なシーンもあり、日本語満載の超悪男子ロボも笑えます。拷問・贖罪・聖所とか・・・。
そのせいか、タク・マシドが「逞しいど!!」に聞こえたのは、自分だけでしょうか?