「格闘モノとしても父子モノとしても手堅いジャブの応酬」リアル・スティール 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
格闘モノとしても父子モノとしても手堅いジャブの応酬
予告が面白そうだったので、初日の初回に出掛けたが、拳闘モノとしても父子モノとしても戦法が手堅い印象。
決してしょっぱくなくてファイトは評価するけど、内容そのものにはKOされなかった。
頼りない父親をしっかり者の息子が檄をトバす絆は『チャンプ』で、
王者サイドは冷酷非情の無敵を誇り、善悪の対立が明確化されたマッチメイクは『ロッキー4』のドラコを彷彿とさせ、殴るだけ殴られ、相手の弱点が解るや怒涛のラッシュを仕掛ける試合運びは『あしたのジョー』そのものやねetc.etc.…
過去のボクシング作品のエッセンスを巧みに取り入れ、テンポの良いパンチ応酬で飽きない。
しかし、致命的なのは要のロボットボクシングにイマイチ魅力が欠ける事である。
第一、いくらロボボクシングが面白いからって、本家の生身の殴り合いが淘汰され、衰退してしまうのは疑問だ。
直前に亀田兄弟の熱闘にばかりやったのもあり、高校生が操る『ロボコン』がハイテク化したような展開にあんなに熱狂する光景は、温度差を感じざるを得ない。
だったら、プロレスや空手etc.他の格闘技の状況においても説明義務が有ると思う。
エンターテイメントとして成り立っている割にはシステムが不完全なのも解せない。
プロ化されているなら階級やルールをもっと明解にすべきだ。
メインエベントの王座戦は、どう考えてもウエイトが違い過ぎる。
大相撲なら話は別だが、今作はボクシング映画である。
割り切って観ても、ロボット同士の試合なのに、どうしてレフリーだけ人間なのだろう?といきなりつまずく。
ヒートアップした際、生身の人間がロボットの間を割って入り、中断できるワケがない。
レフリー専用機を配属するのがフツウではないか。
となると、点を判定するのもロボットでなければ筋が通らなくなる。
しかし、父子モノとして割り切って観ると、なかなかの出来映え。
特に子役が良い。
ヒュー・ジャックマンと一歩も引かぬ存在感を放つ。
日本のTVゲームの大ファンってぇのはヨイショし過ぎやろと思うが、試合で《ロボット》とデカデカとカタカナで書かれたTシャツを着こなす姿は、やっぱし可愛い。
トータル的に並の上って査定で無難じゃなかろうか。
では、最後に短歌を一首
『廃る値で 火花通わす 泥とコブ 夢観る拳 王者(チャンプ)の傍で』
by全竜