「舞台と映画の攻防技。」ダンシング・チャップリン ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台と映画の攻防技。
名画座にて。
今作と往年のチャップリンの名作が同時上映、面白い試みだったv
映画の神様と謳われるチャップリンだが、私も彼の大ファンである。
映画という世界に私を導いたのは、かのJ・ディーンなんだけれど^^;
映画の世界を堪能させてくれたのは故・淀川先生とチャップリンだ。
思えば高校の教科書なんかでも取り上げられていたが(ライムライト)
泣いて笑って何度も人生勉強をさせてくれたのが彼の映画である。
で、そんな彼をモチーフにしたバレエがあったのを知らなかった^^;
1991年初演、R・プティ振付、L・ボニーノ主演のタイトルのバレエを、
今回周防正行監督が妻の草刈民代とルイジを共演させて映画にした。
第一幕と第二幕に分け、企画段階から~構想~練習風景の第一幕と、
本番舞台劇の第二幕、間に幕間まで入り、劇場に来たみたいだった。
非常に面白い試みだと思った。
しかし^^;
舞台と映画はまるで表現方法が違うことを勉強できる?作品でもある。
振付家のプティ氏は周防の企画になかなかゴーサインを出さない^^;
あくまで舞台劇にこだわる彼と、屋外で映画的にも撮ろうとする監督。
どっちがどう、というわけではないのだが^^;どちらの言い分も分かる。
舞台やバレエは人間を観るものだから、余計な背景・配色は要らないが
映画は人間を含めてすべての世界を観るものだから、背景も重要である。
何を観るのか観せたいのかで変わる設定空間を、周防は根気よく粘る。
振付家も意地がありますからねぇ^^;おいそれとは折れないだろうな、と
思いながら、でもせっかく映画にするのなら、違う試みも入れて欲しいと
私ならやっぱり思っちゃうなぁーと考えながら、、観ていた。
結果は…二人の警官。→警官たち。で堪能できるv
そしてダンサー達の息というか、合わせ方も難しいものだと分かった。
本当に何度練習しても呼吸が合わないとムリなものなのだということも。
ベテランと新人との違いをまざまざと見せつける結果ともなっている^^;
草刈とルイジの練習風景、ほのぼのとしながら肝心なところはしっかりと
フォローするルイジのアドバイスぶり(このヒト、還暦とは思えない^^;)
バレエ界のチャップリンだな、と思わせる人となりに気持ちが温かくなる。
何度も何度も繰り返しやり直しを続けて、いよいよ本番を観ることになる。
さすがに。。
バレエは(好き好きはあろうけど)素晴らしかった。面白かった。
草刈は本当に美しいし、ルイジはチャップリンそのものだった。
所々で彼女の身体を支えるルイジがいるのだが、あの歳で(ゴメンね)
堂々と彼女を支えているその軸足が、まったくブレていないことに驚いた。
安定感は素人の私が観ても分かるほど。ホント、さすがだ。ブラボー!!
実際のチャップリンも撮り直しが得意な(爆)ヒトだったらしい。
映画にはそれが出来るため、逆に弱点として取り上げた草刈の言葉が
とても印象に残った。舞台なら一度だけ、だから失敗しても記憶に残らない。
映画ではそれが効かない。失敗は失敗として何度でも上映されてしまう^^;
だから完璧なステップにしなければならない。確かに…本当にそうだなぁ。
プロの意識は常に高い。観るものに感動を与えるのはそういう姿勢なのだ。
(周防夫妻にはまた何か映画撮ってもらいたいですね。喜劇もいいかもよ?)