「ときめかないオトナ版ジブリ。」コクリコ坂から ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ときめかないオトナ版ジブリ。
今やジブリのアニメとなれば、なんやかやと敷居が高い^^;
出来が良くって当たり前、だから昨今では言われ放題。
その一端を作ったと言われる息子、吾朗氏の第二弾である。
高々アニメ制作会社だというのに、何だか哀れな気がする。
最近の米大手アニメ制作会社の不振続きを彷彿とさせる。
でも今作を観てまた思うのだ。吾朗氏は、どうしてそんなに
このジブリにこだわるんだろうかなと。
何を監督してもおそらく、父・駿氏は超えられない(ゴメンね)
どころか、常に父子で戦争して(汗)合わないものを合わせて、
(またその製作ドキュメンタリーをNHKでやるみたいだけど)
そういう裏騒動を、ジブリファンは果たして見たいのだろうか。
ファンが見たいのは、そこではないと思うんだけどなー。
さてこの作品、タイトルを聞いてもまるでピンと来ず、
ところが観始めてすぐ、アレ…?この話知ってるぞ。なんで?
と疑心暗鬼に。(ちゃんと情報を集めない自分が悪いんですが)
あらやだ~、1980年に「なかよし」で連載されていた、高橋千鶴の
同名漫画。あー!そっか、だから読んだ覚えがあったワケだ。
私は「りぼん」派だったので(聞いてないですよね)なかよしの方は、
友人に借りたり、ボチボチ買ったりで、熱心なファンじゃなかった。
でも高橋千鶴はけっこう有名だった。ヒット作は数多い。
ただこの話…あまり面白い話ではないんだよなぁ^^;なんというか、
出生の秘密モノ(当時流行ってたんですね~赤いシリーズとかね)
に絡んだ恋愛と学生生活を、駿氏はグ~ッと時代を過去へ戻して、
オリンピック当時に据えてしまった。懐かしいにはこの上ないが、
古くしたうえに表立った恋愛行動を排除しているため、今までの
ジブリで描かれてきた(古いんだけど、アッサリしているんだけど)
胸がキュンキュン♪するようないわゆる『ときめき』が感じられない。
吾朗氏にその腕がないのか(さっきからホントにゴメンね)果てまた
脚本自体の失敗なのか、悪くはない話なんだけど、なんか残らない…。
しつこく予告編で流されたテーマ曲、坂本九の上を向いて歩こうなど、
選曲はトビキリ♪いいのに、それがなぜそこで?と思うシーンで流れ、
心に残っていかない。。すごく残念。思いきり退いたのは、俊が海に
父親のことを告白するシーン。。エ?なんでこのシーンでそんな曲を?
と思ってしまった。すごく重要なシーンなのに、もしもこれが実写なら、
男女のクローズアップで胸が張り裂けるような告白シーンだというのに、
なぜだ…?と思った。おかしな話だけど、そこで冷めたのは確かだ。
これ、ベースが少女漫画だから、ということではないんだけど、
海が父親を慕う気持ち、自らを奮い立たせて俊に近づいていく気持ち、
海っていう子がどれだけ自分に正直でいられるか、真っ直ぐになれるか、
当時の女の子が男の子に先ん出て告白するなんざ、相当の勇気なのに、
その海本人の描き方に一貫性がないおかげで(ここが父子の違いかも)
観客は彼女の気持ちに寄り添うことができない。入っていけないのだ。
だから胸がキュンとかズシンとか、今までのジブリ版オトナのアニメ?に
感じてきたものが感じられない。俊がとる行動の裏も男の子ならではの
意地とかね、プライドとかね、すごく巧く描かれているんだけど、なんか
やっぱり一貫性がないんだよなぁ。多分これって吾朗氏、つまり監督が
描いたキャラにのめり込めてないというか、どこか他人事、オトナ目線、
父親の世界観に遠慮してるのか?理解していないのか?分からないけど、
どうもそんな気がしてならないのだ。本当に自分が描きたいものが描けて、
表現できていなければ、おそらく、キャラクターが活きてくるはずはない。
今作でもチラリ語られるけど、戦争が奪ったもの。遺したもの。
二つの恩恵が見事に融和しているのが横浜、古いものと、新しいもの。
会社が古くなれば、体質も古くなり、考え方は固まり、右向け右になる。
海や俊がそうしたように、吾朗氏は確かめながら(未だ監視されながら)
ジブリでこれからも戦争を繰り広げていくのか(それもいいとは思うけれど)
まだまだ迷いの多い思春期のような青年が描いた、それでも胸がキュンと
ならない(爆)不思議な作品だった。アリエッティなら、どう決断しただろう。
(潔い決断はそれが間違いでも気持ちの良いもの。一度やってみたら^^;)