ポンヌフの恋人のレビュー・感想・評価
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欠損を抱えて
レオス・カラックス監督のアレックス三部作の三作目。
そんなことは知らず、俳優の古川琴音さんが最近みた映画らしく鑑賞。三作目からみてしまった。
足を怪我した孤独の青年アレックスと片目を失明している画家のミシェル。この“欠損”を抱える二人が、同じく老朽化によって橋としての役割を“欠損”しているポンヌフ橋でラブストーリーを展開する。
序盤のホームレスらを収容する施設の様子が凄まじい。ホームレスらがモノとして扱われ、暴力を受ける。ホームレス達もお互いをモノのように乱雑に扱う。そこには尊厳も何もない。またホームレスらの身体の有り様は役者がホームレス役をしているとは思えず、とても現実的。
アレックスは身体的とともに精神的にも欠損を抱えている。ホームレスとして社会的に尊厳を奪われているのだから当たり前だ。そんなアレックスをミシェルは絵に描く。アレックスが恋に落ちるのも分かる。描かれる対象としてみられるということは、アレックスの実存を承認することに他ならない。欠損の回復である。
それに対してミシェルがアレックスに恋したのが謎。もしかしたら恋してないのかもしれない。
花火のシーンは圧巻。アレックスとミシェルの恋模様が瞬間的に美しく輝く花火で表されているようでならない。
失明が回復するかもしれないと、ミシェルが探されることから物語は大きく展開される。アレックスは自分の元から離れることをなんとか阻止しようと駅や路上に貼られるミシェル探しのポスターに火をつける。ポスターを掲示する人にも火をつけ焼殺してしまう。
結局、ミシェルはたまたま聞いていたラジオ(そのラジオはアレックスがあげたものという皮肉!)によって探されていることを知ってしまう。アレックスの努力は水の泡である。ミシェルはアレックスのもとを去り、再び欠損を抱えたアレックスは自分の指を銃(この銃はミシェルにもらったものという皮肉!)で吹き飛ばす。さらに焼殺によってアレックスは刑務所にいくのである。
物語は数年後も描いていて、ミシェルは失明から回復し、ポンヌフ橋も改修される。彼女と橋は欠損から回復するのである。それに対してアレックスは指を欠損したままである。ミシェルを失ったままである。欠損から回復していない。この二人の比較をすればラストシーンは正直、腑に落ちない。二人は、アレックスの出所後のクリスマスイブにポンヌフ橋で会う約束する。実際二人は会うのだが、ミシェルはその前に眼科医と密会をしているし、別の人(おそらく眼科医?)とホテルに行く予約をしている。それを知りアレックスは怒り、ミシェルと共に橋から落ちる。それなのに船に救助された後、二人は結ばれるのである。ここでもなぜミシェルがアレックスを許し、恋に落ちることができるのか納得できない。
監督は結末部分として悲劇的なものも脚本として準備していたらしいが、ミシェル役のジュリエット・ビノシュが納得しなかったため何パターンか撮影したらしい。そして「まどろめ、パリ」で終わるあのシーンになったらしい。無理やりアレックスを救っている感じがする。おそらくアレックスが欠損を回復できないまま終わる結末があったのだろう。
このように結末に納得はできないものの、いい作品である。
そしてこの作品は欠損を愛によって回復する様を、身体やポンヌフ橋、そして物語で描かれているように思える。と同時に与えた愛はラジオや銃のように別れさせたり、新たな欠損を生み出す要因になりかねないことも示唆しているように思われる。
素晴らしいっす
彼のシリーズの中で最も分かりやすい。かつ、見ていて飽きない。ボーイミーツガールも汚れた血もなんだかこれが日本人には理解できないフランス映画か。という挫折感に苛まれましたが、この映画に関しては比較的大衆向けなのかと思いました。
余談ですが短期留学中に毎日乗り換えしていたあのモンパルナス駅の歩く歩道。が出てきて叫ぶほどテンションが上がりました。
アレックス(?)が燃やしちゃったポスター部屋に飾りたいなあとか思ったりもしました。
汚れた血がよかったから みてみた! ジュリエットビノシュ目当て だ...
汚れた血がよかったから
みてみた!
ジュリエットビノシュ目当て
だったけど最後のポスター
燃やしたりするところは
笑っちゃうぐらいゾクゾクした
汚らわしい人々
若き天才レオス・カラックス監督が魂をこめた作品。
消えゆきそうで不完全な人々の現実を生々しく描く。
パリ・ポンヌフ橋の上でアレックスは自分の寝床で眠るミシェルに出会う。
異彩な才能をもつ画家のミッシェルは目の病気を抱えていた。
アレックスは路上で生活する大道芸人。
二人の間に生まれた恋は、すぐに死んでいくものと思われた・・・
安酒を一気飲みしハイな二人に、大量の花火が一時の喜で満たす。
二人はポンヌフ橋で歪んで不完全な恋を謳歌した。
老人の垂れた尻、酔って男に殴られる女、川に飛び込む浮浪者・・・
汚くて目をそらしたくなる物を、愛でるように詩的に描いている。
臭そうだった
公開当時、レンタルビデオで見た時は感動した記憶があったのだが、それから20年以上経過して見返したら、そうでもなかった。
どんな事情があるのかうっすらしか分からないけどホームレスの生活の描写がファンタジーで、いちゃいちゃしている場面も臭そうとしか思えなかった。片目の絆創膏も取り替えていなさそうなので、不潔だろうし、ホームレス同士の回し飲みも、おえ~と思った。常に固い地面やコンクリートで寝ていて背中が痛くなりそうだった。関わらなければいいのに、お互いに変に指図したり要求したりして、そういうのが嫌でホームレスになってるんじゃないのかよ、と思った。
自傷なども、当時はかっこいい!と思ったものだけど、今は怖いし不気味なだけだ。
しかし、そんなのが問題ではないのが恋愛なのかもしれない。矢も楯もたまらず相手を思う。そうだとしたら、この映画はすごく恋愛を描いていたのではないだろうか。そんな恋愛をしてみたいものだな~と羨ましく思った。
ホームレスを卒業してまともなかっこうで橋に現れたジュリエット・ビノシュがかわいかった。
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