チー公大作戦 メダカを救え!村長選挙 : 特集
実際の大宮市(当時)で起こった不正土地購入疑惑をモチーフに、「政治とカネ」という問題を“コメディ”として描いた「チー公大作戦/メダカを救え!村長選挙」が、完成から9年を経てついに公開。当時、市議会議員としてこの問題追求に尽力し、本作の原案・製作・監督・脚本・主演を努めた杉崎智介が作品公開までの道のりを語った!
トラブルを乗り越えて9年ぶりにやっと公開!
社会派コメディ「チー公大作戦/メダカを救え!村長選挙」とは?
■「政治とカネ」の問題を市議会議員が撮り上げた幻のコメディ!
「製作関係者の1人に騙されたんですよ」
2001年に完成し、地元・埼玉県で試写会も行われていたにも関わらず、その後9年間日の目を見なかった「チー公大作戦/メダカを救え!村長選挙」。その理由を杉崎智介監督はこう語った。関係者の金銭トラブルのカタに「素材がバラバラになっていた」というのだ。監督は、「せっかく作り上げた作品ですから、必ず世に出さなくてはと思いまして。これが実質的なデビュー作となっている俳優もいますから」という想いで、素材の行方を探し、問題を処理し、9年をかけて公開にこぎ着けたのである。
同作がモチーフとして描くのは、実際の大宮市議会で(当時)で98年にクローズアップされ、連日報道された「三貫清水緑地問題」。伝説の湧き水があるとされながらも実際は5億円程度の価値しかなかった土地を、蛍の里建設計画を名目に自治体が54億円もの金額で購入したという不可解な土地取引だ。この問題追求に尽力したのが、当時の市議会議員だった杉崎智介……そう、監督である。杉崎監督が個人で発行する5万部の意見新聞はやがて大きな市民運動を巻き起こし、“映画にしてはどうか?”という話が持ち上がる。このメンバーの中には作家の和田敏も含まれており、彼の小説「チー公物語」のプロット、“イカサマ行商人(チー公)が悪徳政治家の悪事をあばき成敗する”を踏まえた脚本作りが開始されるのだ。
「当時は、地方自治の裏側を映画にするというのは例がなかったんですね。一部の不良公務員と政治屋がどのようにしてカネを作るのか? 誰も触れられない土地開発公社を隠れみのにしたカラクリを、陽の下に晒したかったんです」
ただ、「それを本当にそのままやってしまうと生々しすぎて問題がある」ということで、あくまでも“娯楽”という映画の本質にこだわり、コメディ映画として完成させた。当初は脚本だけのはずが監督を務めることになり、さらには「当初は監督7割のつもりだった」はずが、「(現場のニーズに合わせるために)そうならざるを得ない」状況下で主演(小柳創名義)まですることに。
映画製作はまったくの素人だったにも関わらず、1500人が参加したオーディションでキャストを選出、舞台畑、映画畑から集まった各スタッフをまとめ上げるという手腕を発揮した杉崎監督。「『チー公大作戦』で“政治とカネ”という問題に関心を向けていただきたいのはもちろんですが、辛さから解放されない日々を過ごしている人に“笑い”でホッとしてほしいんです」という想いを込めた幻のコメディが公開中だ。
■現役市議ならではの描写!“リアルすぎる”必見ポイント
コメディという外見ながら、描かれているのはリアルな“自治体と業者の癒着”。市議会議員、そして実業に長く携わった経験を持つ監督だからこそ、本作には“リアルすぎる”描写が織り込まれている。
●二束三文の土地が数十億に!
冒頭の不動産業者と政治家が土地を吟味するシーン。「どうやって一部の不良債権をカネにするか……要は錬金術です。業者と役人と政治家が組まないと成立しませんよね。自治体が直接買い上げるわけじゃないんです。誰も触れられない土地開発公社を通して、高額で買い上げるんですね」(杉崎監督)
●ワイロのやり取りは現金で
「ワイロは必ず現金です。振り込みはしませんね、足が付きますから。新札は使わないですとか、帯封は使わずに輪ゴムで留めるですとか。色々ノウハウがあって、それはこのシーンに反映させています。こういう温泉旅館でこっそり行われるのも実際にあると思いますよ」(杉崎監督)
●議員と記者の本音
一見、あまり意味のないシーンに見えるが……。「ここでは、本物の議員や記者に登場していただいています。身の振り方や候補者のどちらに付くかなんていうのは、政治的信条で考えているわけじゃないんです。選挙の結果が出た際に、どうすれば自分が得をするのか? そういうことなんですよね。ひどいものです」(杉崎監督)
●浮動票の誘導には……
チー公が神主に化けてお告げを出す、というコミカルなシーン。「選挙で重要視されるのは組織票ですね。普段は政治に関心のない人たち=浮動票をどのように確実に選挙に行ってもらうようにするのかがポイントです。ムードを作って動かすことも重要なんです。実際の神社にはここまでの力はありませんが、それを大げさに表現してみたシーンです」(杉崎監督)
●素のリアクションは必見
監督がお勧めする見どころとして、挙げたポイントのひとつ。「(山間部の)地域の方にそのまま出てもらってます。“こういうことが起こりますよ”ということはなにも伝えないで出演してもらっています。なんでもない人の“素”のリアクションをそのまま映すのって、面白いんじゃないかなと」(杉崎監督)
■故・岡田眞澄、故・高松英郎ほか実力派キャスト出演!
杉崎監督自身が、天然のメダカを守るべく奔走する“チー公”として主演に体当たりしているほか(小柳創名義)、ヒロイン役で1500人のオーディションから選ばれた古郡ひろみも見逃せないが、その脇を固める意外な実力派キャストにも要注目だ。
チー公のリーダー、留には故・高松英郎(「黄泉がえり」「サトラレ」)が扮したほか、地元の実力者として故・岡田眞澄(「愛する」「白痴」)も出演。オカマ演技も懐かしい梅津栄(「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」)や、渡辺友子、藤田三保子なども顔を揃える。「ウルトラマンガイア」の吉岡毅志、お笑いコンビ"ワンダラーズ"の沖本達也も出演している。