「人生は魔法じゃない。」イリュージョニスト ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
人生は魔法じゃない。
柔らかい筆致のアニメ故に感じる暖かさと、だからこそ実写以上に感じる人生の機微や辛辣さのギャップ…これがたまらなく、ほろ苦い。
余韻は、ひたすらビターです。
主人公は初老の男タチシェフ。
彼は一介の手品師。魔術師じゃない。
けれども、目の前に熱烈なファンが魔法を叶えて欲しいと願えば、それを叶えずには居られない。
でも、魔法じゃない。
魔法が解けた時、夢は終わる。
そして…再び…現実は流転する…。
タチシェフを慕うヒロイン、アリス。
一見して、彼女は我侭でビッチな印象を受けるけど、それは全然違うんですよね。
タチシェフが彼女に娘と像を重ね合わせ、受け入れた時点で、その悲劇?は始まっていたんだから。
付いて来た彼女を田舎に送り帰すべきだったのに。
あぁ~、切ない。
それにしても、あんなに美しく暖かく流麗なアニメーション、上品にCGまで駆使してて、なのに、こんなほろ苦いストーリーやられると、非常に観ていて胸が掻き毟られますよ。
アカデミー賞ノミネートも伊達じゃなかったんですね。
ディズニーやピクサーみたいに、夢や希望ばかりをやたら喧伝するアニメ(これはこれで好物)の多い中で、とても貴重な一本だったと思います。
観て大正解でした。
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