劇場公開日 2011年3月26日

  • 予告編を見る

「イリュージョニストは魔法使いじゃない」イリュージョニスト 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0イリュージョニストは魔法使いじゃない

2021年5月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

1950年代のパリが舞台。
すっかり人気を失った老手品師、タチシェフは劇場を追い出され、スコットランドの離島に流れ着く。
そこで出会った少女、アリスはタチシェフを魔法使いと信じて慕い、エジンバラへ。
彼と行動を共にすることになる。

また、傑作アニメーションを見つけてしまいました。
鉛筆画のようなシャープだけど柔らかい絵のタッチ。
そして、ほぼセリフがないのがかなり印象的な本作。
さらに、タチシェフとアリスは言葉が通じない。
セリフが少ないからこそ、耳が自然や街の環境音に集中したり、細かい絵に目がいく。
煙草の煙や水飛沫、綿毛などなどアニメーションとは思えない、命のあるような動き。
《FREE SCOTLAND》の文字に、この頃からスコットランドの独立問題があったのかとか、アリスだからあの服なのかとか。
静けさのおかげで膨らんでいく想像、考察。
多少分からなかったところもありましたが、あらすじを調べて解決しました。

多くは語らないからこそ、伝わってくるものがあります。
知らない、伝わらないことによる行き違い、悲しみ。
老人期の孤独、哀愁。
時代の移り変わりによる流行り廃り。
(ストーリー的には違いますが、)2人の関係は友情や絆というより、どちらかというと恋愛のようでした。
ラストは失恋映画のような喪失感。
異民族が混在し、常に多様な文化が生まれる、ヨーロッパらしいアニメーションでした。

唐揚げ