劇場公開日 2011年5月7日

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「究極の自己満足映画」星を追う子ども krsknrmさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0究極の自己満足映画

2011年5月7日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

独特の世界観と映像美で評価の高い新海誠監督の最新作「星を追う子ども」を拝見。
監督のやりたいことをふんだんに盛り込んだだけのなんともビックリする究極の自己満足映画でした。

今作では、今までの作品で高い評価を受けてきた新海流を少し抑え、批判を恐れずジブリ(正確には日本の古きよき時代のアニメ)を思わせる世界観をツールとして作品づくりに挑んだそうですが、その試みはとても興味深く、それだけに楽しみにしていました。この作風にした理由が、これまでやって来たことに飽きた、と言うのも笑えましたし。
ですが蓋を開けてみれば、その実態は自分のやりたいこと、表現したいことをそのまま絵にしただけの、しかも笑ってしまうくらい中二病精神に満ち満ちた稚拙な作品です。
作り手のやりたいようにやる。それ自体は間違ったことでは無いでしょうが、映画はお金が発生するビジネスです。
当然スクリーンの前に座るであろう観客の事を頭に入れて作らなければならないと、個人的には思います。実際2000円弱払っているわけですし。
やりたいことをやりつつ、それをもって何を伝えたいのか、観客にどう考えて欲しいのか、そういったメッセージが伝わって来るような作品でなければならないはずです。
何の内容も詰まっていないようなコメディ作品だって、必死に考えて笑いを捻り出しているんです。
そういった、いわゆる作り手の誠意が、この作品からは全く伝わって来ません。ただ2時間ダラダラと監督の濃い妄想に付き合わされただけです。
例を挙げれば、主人公のピンチにかっこよく白馬の王子様が登場する見せ場なんて、小学生向けヒーローアニメでも無い限り、作中に1回あればそれで充分なんです。そしてそんなシーンを多用したところで一体何が伝わるのか。
1回目はほど好い爽快感、高揚感を感じられても、2回目3回目はウンザリするだけ。
いわゆる、そういった「見せ場」を上手に使うのでは無く、入れたいだけ盛り込んでしまっているので、作品をもり立てるツールとして全く機能していません。
もちろんそれだけではありません。
日本が世界に誇るアニメーションの原点ともいえる過去の作風を取り入れる試みだって、そのアイデア自体はとても良いのに、ただその作風を「借りてきた」だけで、じゃあそれを取り入れて何がしたかったの?これにそれ、必要だった?と言いたくなってしまうようなお粗末さ。
そして何より許せないのは、ストーリーの根底にあるはずのひとつの筋が全く見えないことです。
登場人物達の行動の動機の希薄さ、一貫性の無い立ち振る舞い。そのせいで、何をきっかけとしてどのようにストーリーが動き、どこに帰結するのか。とにかく支離滅裂です。
他にも書ききれない程の、どこを取っても良いとこ無しの大失敗作です。
こんな作品、ネット上で誰でも観られる自主制作アニメにでもしておいてください。

過去の新海作品の大ファンだった僕としても、誰にもオススメできない作品でした。本当に本当に残念です…。

krsknrm