「クロエ嬢の可愛らしさは、血にまみれてナンボ」モールス 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
クロエ嬢の可愛らしさは、血にまみれてナンボ
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あいにく元ネタは未見だが、その分、ニュートラルに今作のダークな御伽噺を存分に堪能できた。
『キックアス』での痛快な抹殺ぶりが強烈なインパクトをぶちかまして、まだ間もないクロエ嬢が、今作でもあどけない狂暴さで愛嬌を振り撒いている。
少し成長した身体に帯びた陰の濃さが、大人の女の色気に近づいた印象があり、改めて、
「この娘は危険やなぁ〜〜」と感じた。
彼女の存在感に一切、力負けせず、対等に迎え撃つイジメられっ子の哀愁も大きい。
『キックアス』同様、ガキ共が過激なバイオレンスにドップリ浸る映画は、邪険に扱われる運命だが、こういう作品こそ、キチンと評価しなければいけないと私は思う。
今作の最大の悲劇は、2人が唯一、心のよりどころにした愛は置き去りに、イジメも彼女の狂気も孤独も血しぶきも全て容赦なくエスカレートしていく息苦しい閉塞感であろう。
よって、優しさや愛情がいくら追いかけても、一瞬の慰めにもならず、血に染まる闇の奥へ更に追い詰めていく。
彼の差し出したキャンデーが受け入れられない体質なのに、気遣ってグレープを選ぶ。
選択した色の意味。
そして、彼女に付き添い、世話をする老人の姿が、ピュアな痛々しさを象徴しており、救いのない2人の愛の未来を予期し、自然と涙が流れた。
B級ホラーの老舗・ハマープロ製作だけに、特撮がギクシャクしまくっており、悲壮感漂う物語との落差に戸惑ってしまうのが難点だが、観終えると、あの粗さが世界観を緩和してくれていたような気もする。
帰り道に赤ワインとトマトジュースが無性に飲みたくなったところで、最後に短歌を一首
『舞ふ闇の 裸足で啜る 紅ひ雪 契り密かに 壁際に咬む』
by全竜
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