「モールス」モールス tsblueさんの映画レビュー(感想・評価)
モールス
この映画を観終わった時、実は良く分からなくて、少年と少女であるヴァンパイヤの恋愛物語かなと思ったのです。そうだとすればありふれていておもしろくないなァと思いながら考えていたら、少女は何百年も生きている・・ということはその知識や経験も見かけの12歳ではありえないということに気付きました。人間的な感情など全く関係ない世界を生きているのです。そう思うと背筋が寒くなるような恐怖感を覚えました。そのことを確認したくて思わずその日のうちに2回目を見たのです。そしたらすべての場面がその本当のストーリーにそって展開されていることにびっくりしました。少女は少女などではなく、人間には理解できない怪物だったのです。愛情とか友愛とかの人間的な感情で動くのではなく、自分の為に尽くす下僕をつくる物語だったのです。こんな映画は初めて経験しました。観客をも騙し、本当のストーリーを最後まで明かさないのですから。そこに気付いた観客だけがその恐怖を味わうというわけです。スティーブンキングが絶賛したというのも納得できます。「何歳なの?」「12歳・・くらい(見かけはね)」(級友からいじめられて)「私が助けてあげる」「だって君、女の子でしょう?」「あなたが思っているよりは強いのよ(とんでもなく強いのよ)」という具合に隠されているストーリーを読みとってはじめてこの映画が理解できるのです。いろいろなシーンを思い返してみて初めてその怖さが分かるというのもこの映画の凄さです。プールのシーンはヴァンパイヤが去るふりをして、少年を監視していたことをうかがわせます。去った以後の少女の全体や表情のシーンがないことに気付きましたか?少年は少女の本当の姿を知ったのかもしれません。しかし下僕となって犬のように着いていくことを決めてしまったのでしょう。私にとって脅威の映画でした。素晴らしい監督です。