「母親の愛」八日目の蝉 たかあきさんの映画レビュー(感想・評価)
母親の愛
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この映画は、母親の愛の話である。
最初の裁判所のシーン、赤ん坊を誘拐した希和子は反省の色を見せず、悪者の様に描かれるのかと勘違いしたが、
映画が進めば進むほど、血のつながった母親より、希和子が母親らしいことに気づくだろう。
逃亡生活の中で際立っているのは、小豆島での暮らしだ。
おじいちゃん・おばあちゃんの様な存在ができて、家族の時間の素晴らしさを実感する。
薫にも島の遊び友達ができて、楽しい期間を過ごす。
一番感動的だったシーンは、希和子と薫が二人で火を持って歩き(お盆の迎え火か送り火?)、
山の斜面にその火が連なった様を眺めるところだ。
薫を誘拐して逃亡し、エンゼルハウスでの制約された暮らしからも逃げて、ようやく辿り着いた小豆島での幸せな暮らし、
その幸せが集約されたシーンに感じた。
皮肉にも、その時に撮られた写真が全国紙に載ってしまい、薫は元の母親のところへ連れ戻される結果となる。
希和子から薫への愛は、薫からお腹の中の子への愛に引き継がれる。
その母親の愛は、子供に美しい景色を見てほしい、という普遍的なもので、八日目の蝉に表されるこの映画の主題だ。
個人的には、幼少期に制約された暮らしを送ったゆえに挙動が不審な千草(小池栄子)が、恵理菜(=薫、井上真央)と対照的に描かれて、非常にいい引き立て役を果たしていると感じた。
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