「見る側を洗脳させず、客観的に見た映画」八日目の蝉 トーレスさんの映画レビュー(感想・評価)
見る側を洗脳させず、客観的に見た映画
八日目の蝉とは誰なのか?
最初の誘拐するシーンや写真屋のシーン、ただ暗いのではない人間の心を表したかのような照明。サウンドもピアノメインで、飾り気のない状況を上手く作っている。
飾り気のない状況と何もしないのとは違う。見る側を洗脳させずどう思うかを問うような意図があった。
井上真央も永作博美もよかった。そしてなにより小池栄子が良い。
そしてタイトルの複雑さ。八日目の蝉は可哀相だが幸運。何度か「八日目の蝉」というキーワードが出てくるが、時間が経っていくにつれ八日目の蝉に対する考えが変わっていく。
またその八日目の蝉とは誰のことを言っているのか。
改めてこの映画のテーマとは、「母性」である。
形だけで見ると、ごく普通の家族の子供を誘拐した人が捕まる。それだけ見ると誘拐犯は悪者だ。だが見てみればわかるが、最後のクライマックス、自然に誘拐犯の側から見てむしろ誘拐犯を肯定的に見てしまっている。母性で誘拐したなら許されるのか、そうではない。じゃあ母性とはなんなのか。これは母性ではないかもしれない。なぜなら誘拐犯は母親ではないのだから。でも人の赤ちゃんを見て自分の全てを捧げても幸せにしてあげようと思う誘拐犯はもう最後の方は完全に母親になっていた。
考えさせられる映画といえる、作品賞候補に相応しい作品だ。欠点は最後の方はだらだらしてしまったか、それくらいだろう。
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