劇場公開日 2011年5月11日

  • 予告編を見る

「白鳥が奏でる狂気の世界」ブラック・スワン キューブさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0白鳥が奏でる狂気の世界

2012年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

 これほどグロテスクで恐怖を感じさせる映画は見たことがないかもしれない。
 ポートマン演じるニナは大役を演じるためのプレッシャーにより精神に異常をきたしてくる。現実と幻覚の区別がつかなくなり、黒鳥を演じるためにますます追い詰められていく。その狂気の過程が非常に細かく描かれていて、表現が難しい人間の内面の変化が観客にも伝わり恐怖がじわじわと襲ってくる。バレリーナの世界の嫉妬渦巻く様子も精密で見ているこっちが苦しくなっていく。キャストも完璧でポートマンはもちろんカッセル、クニス、過保護な母親役のハーシーも最高の演技を見せる。特にハーシーはニナ以外で唯一、壊れている人間でニナが見る狂気の世界と同じぐらい怖い。もしかしたらその母親もニナの強迫観念の一つなのかもしれないが。
 観客は見ている内にニナと同様、現実と幻覚の区別が分からなくなりながら最後のクライマックスへと向かう。最後の黒鳥のダンスはこの映画が持つ恐怖を体現している。
(11年5月16日)

キューブ