「王を支える人々」英国王のスピーチ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
王を支える人々
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
吃音症の治療をするだけの話なのに、それが国王相手ともなれば単なる治療では終わらない。吃音に劣等感を感じて悩む元々の個人に加えて、それが国政に与える影響を考えたときの重圧が話を複雑にする。愛のために王座を捨てたことで有名な兄のエドワード八世の話も、見方を変えれば自分勝手でけっこうな悪役扱いなのは興味深い。
吃音治療に悪戦苦闘する国王の話も悪くないが、国王を支える献身的な妻と二人の娘を見ると幸せそうで感じがいい。物語の影の立役者はこの妻であろう。そしてオーストラリアからの移民で柄の悪い地域で怪しい治療院を開業しているジェフリー・ラッシュ演じるライオネルのやり方が面白い。王族を相手にいつも通りに対等の立場を要求するなど自分のやり方で相手を治療しようとしつつも、どこまでもそれを押し通そうとすれば彼の機嫌を損ねるし、最高の患者を逃がすことにもなる。そのぎりぎりの線を見極めようとしながら四苦八苦し、信頼を少しずつ得ながら突然相手を怒らせてしまい、再び信頼を取り戻し友情まで築くまでの過程が一番楽しめた。
でも動乱の時代に王族として細々としたことが色々あったといえども、戦争を前にして吃音治療という比較的小さな主題にはそれほど興味を持てなかった。それと演説だけが強調されていたので、もっと彼らの地道な努力の治療の過程を描写してくれればさらに良かった。しどろもどろな吃音に悩む国王ジョージ六世を上手く演じたコリン・ファースがアカデミー賞を獲得したが、自分としてはこのジェフリー・ラッシュの存在感が高かった。主題よりも登場人物の演技と丁寧な演出で楽しめた。