劇場公開日 2011年2月26日

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「日本の目指す姿を感じた」英国王のスピーチ gsacraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5日本の目指す姿を感じた

2011年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

静かな興奮に身を浸し、劇場を出ても余韻を味わい続けることが出来る、素晴らしい作品でした。

幼少時から吃音という問題を抱え、王族として理想を持ちながらもそこにたどり着けない自分に内なる怒りを燃やしているジョージ6世。
なんといってもコリン・ファースが素晴らしい。一見すると癇癪持ちでわがまま、とも取れそうな立ち居振る舞いを取るのだが、心根には慈愛を持ち、国民への深い思いを持っていることが伝わってきます。

そもそも英国の王族が、オーストラリア人に救いを請う、という時点でかなりのストレスを持っているはず。それでも吃音をなんとかしたい、との一念で通い続ける・・・この時代の英国人が羨ましくなるような責任感。

そして圧巻は第2次大戦開戦にあたってのスピーチシーン。一語一語が重みを持って響き、国民を戦争に向かわせざるを得ない国王としての無念さ、それを超えた決意が全身で感じ取れました。

私は常々、政治とは言葉でもって行われるべきであり、翻って日本の政治では、本質的には重要でない他の要素ばかりが取り上げられ、一番重要な「言葉」がないがしろにされすぎている、と思っていました。(わりと最近絶大な人気を誇った元首相は言葉でほめられていたようだが、個人的にはあのワンフレーズ政治は全く評価していない。説明責任を放り出して雰囲気だけで進めたものだから。)

英国の政界では、「言葉」が今も重要性を持っていると聞いてはいましたが、本作を見て、このような伝統があることが心底羨ましいと思ってしまいました。

この国でもいつか、ジョージ6世のようなリーダーに出会いたい。より一層真剣に選挙に向かおうと思わされる映画でした。

gsacra