「指揮者とたった一人の楽団員」英国王のスピーチ SAOSHIーTONYさんの映画レビュー(感想・評価)
指揮者とたった一人の楽団員
私は吃音にこそ悩まされたことはありませんが、過去に弁論大会で失敗した事があり、それ以来人前でしゃべるのはるのは苦手になりました。本編に登場するライオネルのような存在がいればと思うと・・・。何だか悲しい気持ちになってきます。
1925年から1939年に掛けてこの物語はロンドンで繰り広げられるのですが、初めは王子だった主人公のジョージは吃音に悩まされているせいで大勢の前で恥をかいてしまいます。その後妻エリザベスがこの手の手の専門家でスピーチセラピストのライオネルに助けを求めます。初めはライオネルから心を閉ざしていたジョージでしたが、次第に彼の教えに従うようになり、彼は自身の病気を治そうと奮闘します。
注目はなんと言ってもコリン ファースとジェフリー ラッシュの演技合戦。特にファースは完全にジョージというキャラクターを自分のものにしていて完璧な演技を魅せています。一方のライオネルを演じるジェフリー ラッシュも負けてはいません。繊細で優しいおじさんと言った印象を持たせる演技でこちらは完璧すぎる演技を発揮していると思います。そして、何と言ってもクライマックスのスピーチが見所です。ここで二人の繊細な演技がぶつかり合いまるで指揮者とたった一人の楽団員のような関係へと発展。見ごたえ十分です。それから夫を献身的に支えるヘレナ ボトム カーターも良い味を出していると思います。
この物語に大きな弱点というか欠点はないのですが、もう少しライオネル側の苦悩をもっと観たかったというのがあります。たとえて言うなら「プラダを着た悪魔」のメリル ストリープのような一見完璧に観えて実は・・・みたいなそんなものがほしかった気がします。
しかし、これはなかなかの傑作です。二人の演技が見事なハーモニーを奏でる素晴らしい一本だと私は思います。