劇場公開日 2011年2月26日

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「葛藤と試練」英国王のスピーチ D.oneさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5葛藤と試練

2020年6月8日
iPhoneアプリから投稿

 華やかな国王としての一面ではなく、大きな苦しみと悩みを抱えた一人の人間の試練を描いた良作。史実を基にした映画といえども、歴史や政治を全面に扱うものではなく、あくまでも国王が抱え持つ内側の苦しみと葛藤を描き、人々に投げかける"言葉"の重みと大切さを映し出して観る者に深い共感と感動を与えてくれます。
 この映画はカメラワークを多様に使い分けて、ジョージの葛藤や心情を物理的に見事に表現していると思いました。ジョージが吃音の克服練習をしている時のアングルは固定カメラを多用していて、こちらが見守っているような感覚を覚えますし、いざジョージが重臣達向けの宮殿内スピーチに向かう時は、ジョージのすぐ後ろに張り付いた視点で一緒に歩き出し、ドアを開けると重臣達が大勢いる緊張感を追体験できます。そしていざスピーチを始める瞬間には妙にジョージの顔にクローズして物理的に距離を近づけ、あるいは下からのアングルで重臣達を映して圧迫感を演出しています。肝となる終盤の国民向けのスピーチでは、クローズとフェードアウトを使い分けて緊張と盛り上がりを上手く演出させていました。コリンファースの演技も見事な上に、色んな工夫が施されていて面白かったです。チャーチルが似てないのは残念でしたけど…(先にゲイリーオールドマンのウィンストン・チャーチルを観てしまったので余計にそう感じてしまいました)

D.one