英国王のスピーチのレビュー・感想・評価
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言葉の重み
日本の政治家などを見ていると、政治とは言葉で煙に巻くものかと思ってしまうことがある。いい加減な答弁で時間を浪費し、屁理屈じみた言葉の定義で本来の言葉の意味をも歪ませてしまったり、総じて言葉の軽さがめにつく。しかし、本作や『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』などを観ると、政治において言葉とはなにより大事なものだと実感させられる。言葉によって社会を動かすのが政治であり、それをするには修練と試行錯誤が欠かせない。
本作は英国王ジョージ6世の歴史的スピーチの裏側に焦点を当てる。ジョー・ライト監督の『ウィンストン・チャーチル』にも登場する人物だ。チャーチルも見事な演説で英国民を戦争の危機に向き合わせたが、このジョージ6世のスピーチもまた多くの英国民を鼓舞した。
史実とは異なる点ももちろん散見されるが、言葉の重みを描いた秀作だ。
【81.2】英国王のスピーチ 映画レビュー
作品の完成度
歴史的な事実に基づいた、吃音に悩む英国王ジョージ6世(バーティ)と、異色の言語聴覚士ライオネル・ローグとの友情と成長を描いたヒューマンドラマの傑作 脚本、演出、演技、美術、音楽の全てが高いレベルで調和し、一つの作品として隙のない完成度を誇る 吃音というデリケートな主題を扱いながらも、センセーショナルにせず、ユーモアと温かさを交え、人間ドラマとして深く掘り下げた点に成功 抑圧された王室の空間と、庶民的なライオネルの診療所との対比的な描写は、二人の関係性の変化を象徴的に示す 歴史的背景を超えて普遍的な共感を呼ぶテーマと、緻密な構成、そして役者陣の圧倒的な演技力が結実した、映画史に残る名作の一つ 第83回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞の主要4部門を受賞
監督・演出・編集
監督:トム・フーパー
抑制的でありながら、感情の機微を的確に捉える演出 吃音による内面の葛藤を、クローズアップや広角レンズを効果的に用いて表現し、バーティの孤独と不安を体感させる 王室の閉鎖性と、ライオネルの診療室の解放性の対比を明確にし、物語の進行とともに二人の世界の融合を描き出す カメラワークや構図は、時として緊張感のあるフレーミングを用い、王室の格式とバーティの心理的な圧迫感を視覚化 ユーモアとシリアスのバランス感覚が絶妙
編集:タリク・アンウォー
二人の会話劇をテンポ良く、かつ緊張感を保ちながら繋ぐ 感情の爆発や、吃音による言葉の詰まりといった重要な瞬間に、間やカットのタイミングを巧みに操作し、ドラマティックな効果を生み出す 終盤の、戦争勃発を告げるスピーチのシーンでは、緊迫感と感動を最大化する編集技術
キャスティング・役者の演技
主演:コリン・ファース (ヨーク公アルバート王子/ジョージ6世)
吃音という障害を持つ王子の内面の苦悩、弱さ、そして王としての責任感との間で揺れ動く複雑な心情を、緻密な身体表現と表情で見事に体現 どもりの演技は単なる模倣に留まらず、その背後にある深い劣等感、怒り、不安といった感情の機微を繊細に演じきった ライオネルとのセッションを通じた精神的な解放と成長の過程は、観客に強い共感を呼び起こす この演技で第83回アカデミー賞主演男優賞など、数々の賞を獲得
助演:ジェフリー・ラッシュ (ライオネル・ローグ)
バーティの吃音治療に当たる、型破りな言語聴覚士の役を、ユーモラスかつ深みのある演技で体現 王族に対しても物怖じしない大胆さと、セラピストとしての深い洞察力と温かさを併せ持つキャラクター像を確立 バーティとの対立と和解、そして真の友情を築く過程において、時に厳しく、時に優しく接するライオネルの人間性が物語の核となる 第83回アカデミー賞助演男優賞にノミネート
助演:ヘレナ・ボナム=カーター (エリザベス妃/クイーン・エリザベス)
吃音に苦しむ夫バーティを献身的に支える妻の役を、内なる強さと優しさを秘めた演技で表現 夫の苦悩を理解し、彼のために最高のセラピストを探し出す行動力と、王族としての品格を持つ女性像を見事に描き出した 夫を思う一途な愛情と、王室を守ろうとする強い意志がバーティの精神的な支えとなる 第83回アカデミー賞助演女優賞にノミネート
助演:ガイ・ピアース (エドワード8世/エドワード)
王位よりも愛を選び、弟バーティに重責を負わせる退位王を演じる 享楽的でありながらも、弟への複雑な感情を抱く兄の姿を、短い出演時間の中で印象的に表現した 後の国王となるバーティとの対比として、彼の奔放さと無責任さが際立つ
助演:マイケル・ガンボン (ジョージ5世)
厳格な国王であり、吃音に悩む息子バーティに強いプレッシャーを与える存在 威厳に満ちた佇まいと、息子への期待と失望が入り混じる複雑な父親像を重厚な演技で表現 王室の伝統と責任を重んじる彼の存在は、バーティの吃音をさらに悪化させる一因となる
脚本・ストーリー
脚本:デヴィッド・サイドラー
吃音を持つ国王という歴史上の事実を基にした感動的な人間ドラマ 古典的な「ヒーローの旅」の構造を踏襲し、個人的な問題を抱えた主人公が、型破りなセラピストとの出会いを経て成長し、大役を果たす ライオネルとバーティという身分違いの二人が、互いの壁を乗り越えて友情を築く過程を丁寧に描写し、その会話劇が物語の推進力となる 吃音の治療シーンを通じて、バーティの過去のトラウマや、王室の抑圧的な環境が明らかになり、深みを持たせる 第83回アカデミー賞脚本賞を受賞
映像・美術衣装
映像(撮影:ダニー・コーエン)
全体的に抑えた色調と柔らかな光が特徴的で、1930年代の英国の重厚な雰囲気を再現 吃音によるバーティの内面の閉塞感を表現するため、広角レンズやクローズアップを効果的に使用し、視覚的な圧迫感を生み出す ライオネルの診療所は対照的に温かい色調で、解放的な雰囲気を醸し出す
美術・衣装(美術:イヴ・スチュワート、ジュディ・ファー / 衣装:ジェニー・ビーヴァン)
当時の英国王室の豪華で格式高いインテリアや調度品を忠実に再現 ライオネルの診療所は、雑然としつつも人間味あふれる空間として、王室とのコントラストを際立たせる 衣装は、それぞれの階級と個性を的確に反映 エリザベス妃の洗練された衣装は、王室の威厳と彼女の芯の強さを表現
音楽
音楽:アレクサンドル・デプラ
感情を煽りすぎることなく、物語に寄り添う抑制的で美しいスコア ピアノとストリングスを基調としたミニマルな楽曲が、バーティの内面の葛藤と、ライオネルとの静かな交流を繊細に彩る 終盤のスピーチのシーンでは、ベートーヴェン:交響曲第7番 第2楽章が効果的に使用され、歴史的な重みと感動を増幅させる 主題歌はなく、サウンドトラックにはオリジナルスコアと、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章などのクラシック楽曲が収録 アレクサンドル・デプラは第83回アカデミー賞作曲賞にノミネート
受賞歴・ノミネート
第83回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞の主要4部門を含む最多12部門にノミネートされ、4部門を受賞 第68回ゴールデングローブ賞では、作品賞(ドラマ部門)にノミネートされ、主演男優賞(ドラマ部門)を受賞 英国アカデミー賞(BAFTA)では、作品賞など7部門を受賞
作品The King's Speech
監督 トム・フーパー 113.5×0.715 81.2
編集 退屈
主演
コリン・ファースA9×3
助演 ジェフリー・ラッシュ A9
脚本・ストーリー デビッド・サイドラー B+7.5×7
撮影・映像 ダニー・コーエン B8
美術・衣装 美術
イブ・スチュワート
衣装
ジェニー・ビーバン A9
音楽 アレクサンドル・デスプラ B8
二人のスピーチ
この映画を一言で表すなら「友情が王をつくった物語」だと思います。表向きは英国王ジョージ6世の吃音克服と戦時下の演説を描いた歴史劇ですが、核心にあるのは彼とローグの間に生まれた深い友情です。
王でありながら人前で言葉を発することに苦しむジョージ6世。彼にとってローグは、単なる言語聴覚士ではなく、心の奥底まで踏み込んでくれる唯一の存在でした。形式を重んじる宮廷では得られない率直な対話、王族である前に「一人の人間」として扱ってくれる安心感。それがジョージの背中を押し、声を届ける力となっていきます。
二人のやり取りには、治療以上の温かさがありました。緊張で声が詰まるときも、ローグは決して苛立たず、冗談やユーモアで空気を和ませます。まるで「お前は一人じゃない」と言い続けているかのよう。友情の支えがあったからこそ、ジョージは国民に向けて堂々と声を響かせることができたのです。
戦争や王室の重責といった大きなテーマを扱いながらも、この作品の魅力は「誰かに寄り添われることで、人は弱さを超えられる」という普遍的な真理にあります。ジョージ6世のスピーチは王の義務であると同時に、友との絆が生んだ奇跡の証でした。
英語の吃音って? 高貴な方は、それはそれなりに悩みがあるんですね。...
英語の吃音って?
高貴な方は、それはそれなりに悩みがあるんですね。
ヘレナ・ボナム=カーターはここにも出演してる…。アリスの赤の女王、チョコレートのお母さん、ナルシッサ、スウィーニー・トッド…にも出てた。(大竹しのぶに似てるな~といつも思う。)
実話なんですよね?としたら、エドワード8世は純愛を貫いた人というイメージだけど、家族にしたらとんでもない兄ちゃんだったってことになりますね。
すべてを忘れて、私に話して
過去に、レンタルで観ました💿
コリン・ファース演じるジョージ6世とジェフリー・ラッシュ演じるライオネルの掛け合いが良いですね😀
ライオネルは国王の吃音が心理的なものからきているのに気づき、そこからアプローチしていく。
その過程で、2人は徐々に信頼関係を築きますが、ライオネルにも秘密があったり🤔
内気な国王を繊細に、かつ人間味のある演技で表現したコリン・ファースは流石でした🙂
ジェフリー・ラッシュも、一風変わった言語療法士を巧みに演じます🙂
エリザベス妃にはヘレナ・ボナム=カーター、エドワード8世にはガイ・ピアースと、脇を固める俳優陣もなかなか豪華👍
アカデミー賞4冠は伊達ではない、見ごたえのある一本でした🫡
面白かった
スピーチの度にこっちまで力が入る
期待せずに観た映画だったけど、とてもよかった。バーティがレコードに録音された自分の声を聴くシーンにはゾクゾクさせられるし、マイクの前で話す時は、こっちまで緊張して身構えてしまう。吃らないよう、祈る気持ちで観てしまう。ライオネルとエリザベス王太后の支えがなかったら、多分この国王は心が病んでしまったんじゃないかな。長女のエリザベスもしっかり者でかわいい。あのエリザベス女王の子供時代と思うと微笑ましい。
スピーチは内容と同じかそれ以上に話し方が大事
ベートーベン交響曲 7番第2楽章をバックに、私たちはドイツへの宣戦布告の王のスピーチを聞く。開戦にあたって国民の気持ちをまとめるためのスピーチ。戦争なんてとんでもない、勿論だ。でも当時の世界状況の中、前例や首相の意見に従うこと以外に何を王室に求めることができただろう?
スピーチをするジョージ6世の前には(王が言葉を交わした初めての「平民」であり言語聴覚士である)友のローグがこちらを見て立っている。スピーチ原稿をすべて暗記しているローグの指揮のような表情に助けられ、ゆっくり息継ぎし体は柔らかくポーズを入れながらのスピーチは聞く人一人も取りこぼさず、土に水が確実に染み込むようなスピーチだった。それに比べてヒトラーの演説の強引さと声の無駄な大きさと硬直した身体よ!聞く人を歓喜させ思考停止させ攻撃的にする。そういう話し方をする人というのが私は苦手で怖いし信用しない。
俳優が吃音で話すという難役をこなしたコリン・ファースが素晴らしい。キャラクターも声の質もコリンに合っていた。ジョージ6世本人は王子の時、第一次世界大戦に海軍、空軍の士官として従軍している。コリン・ファースに軍服は似合わなかった(それは幸せでいいことだ)。兄が退位したので押しつけられた形で王となったジョージ6世。真面目な彼は「スペア」としての役割を引き受けながらも悩み泣く。如何にkingingが重責なのかが伝わる。宣戦布告のスピーチ後、何度、戦争関連スピーチをしなくてはならなかったか。自分で仕事を選べない。子ども時代も強制されることばかり。妻役のヘレナ・ボナム・カーターは「ファイトクラブ」でノートン役のガールフレンドになった人!雰囲気がまるで異なる!彼女演じる妻、母エリザベスは、思慮深く愛情に溢れている。ジョージ6世の死後、エリザベス女王になった長女のタフさと賢さは母エリザベスからのギフトに思える。
ジョージ6世の吃音を治すために献身したローグの笑顔とユーモアは緊張で固くなる「バーティ」の心を溶かした。
丸の内TOEIで見た
後記
吃音の友達(イギリス人)を思い出した。ドイツ語を話す時、吃音はかなり大きかった。彼の母語である英語を話す時はドイツ語ほどには目立たなかった。ドイツ語の子音の問題なのかと思った。子どもの頃、母親から辛くあたられていることがあってそれが吃音の原因なんだと思うと本人は言っていた。
忘れない為にレビュー
吃音症に悩むジョージ6世。だがライオネル(言語聴覚士としての公認の資格が無い)のおかげで最後の戦争スピーチで王たる声明を無事に届けた。超ざっくりと。
このライオネルさんが資格も無いにもかかわらず知識と経験と実績で結果を出す様が最高にカッコ良かったですね。
この映画が実話であり、またその時代背景(ヒトラー、スターリン、チャーチル)とか色々としてるので勉強になる。
あと兄貴が完全にヘンリーとメーガンで笑いましたね。
これは良い映画。文句無しのトップ100に入る。
人生と友情を描いた、素晴らしい良作だ。
吃音に悩むヨーク公アルバート王子(後の英国王ジョージ6世)と、彼の治療にあたった言語療法士(平民階級で豪州人)とのユニークな友情を、スタイリッシュなスタイルながら、心温まるタッチで描いている。
主人公は、父王ジョージ5世の崩御、兄王エドワード8世のスキャンダルと退位によって、英国王となる一方、欧州では、ナチスドイツの台頭によって、二度目の世界大戦が迫っていた、、、。
コリン・ファースが、国王たらんとする誇りと、人間的な弱さとの間で、絶妙なバランスを保っている。言語療法士を演じたジェフリー・ラッシュも、素晴らしい好演といえる。
ものすごい大作映画という印象は無いし、あまりに過剰な演出が無いところも、かえって好感が持てる。英国映画らしいユーモアがあるし、複雑な友情と個人的な信念をテーマに、刺激的で感動的な、人生を肯定する映画だ。
ことだま
歴史の裏側を知れる作品。
良かった!
吃音症の英国王とその治療にあたる男ライオネルの友情を描いた映画だと思います。二人の心の距離が徐々に近くなっていき、信頼関係ができていく描写は見ていてとても心地よいものでした。ストーリーも難しくないので軽く内容が入ってきますし、感動しますのでおすすめです。
吃音に向き合い努力したことが彼の人間の幅を広げた
王というスピーチが主要な仕事になる立場において吃音を抱え、それでも王の立場から逃げられないヨーク公の苦悩は大きかっただろう。しかし吃音に向き合い努力して克服した経験は、ヨーク公の人間の幅を広げ、彼の人生をより豊かにしたように思えた。また、ヨーク公が吃音になった背景をしっかり説明していたのも、ストーリーに深みをもたらしていて良かった。
王の立場から逃げられない状況と、言語聴覚士の激励でヨーク公に自信と覚悟は備わったことだろう。しかし、スピーチを苦手とし沈黙する場面も多かった序盤と、それを克服し多少流暢に話せるようになった最後とで、ヨーク公の中で具体的に何がどのように変化したのか分かりづらく、感動が薄かった。怒りの感情を示したときだけは流暢に話せ、それをトレーニングにも取り入れているのは分かる。しかしスピーチで怒鳴ることは無い訳で、克服の要因は別にある。そこをもう少し具体的に描いて欲しかった。
友情が確固となる瞬間
遅れてでもこの作品に出会えてよかった。
お正月映画に選んで大正解でした。
家族と泣きながら観た。最近殺伐としたニュースや事故、災害が多いので、自分の難所を克服して国民へ勇気を与える物語に感動しました。言語療法士との友情もすごくよかった。吹き替えで見たので今度は字幕で俳優さんたちの声を聞いて見たいです。遅れてでもこの作品に出会えてよかった。
王道かな
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主人公は英国王の息子で、吃音に悩み人前でスピーチが出来なかった。
色々な病院に行くが全然治らず、ある先生のもとへ。
その先生はそれが筋肉の動作等の肉体的要因によるものではなく、
精神的なものである事を言い当てた。実際にそうだった。
そして二人三脚で治療を進めて行き、少しずつ改善して行く。
やがて国王が死に、兄が戴冠を拒否したため主人公が後を継ぐ。
そして国民の前での初のスピーチを先生に段取ってもらう。
先生がいる事で心にゆとりを持てたおかげでスピーチは成功。
しかし実は先生は無免許医だった。
戦争で病んだ人々を治すうちに本当の医者以上の物を身につけたのだった。
そういう過去を知った主人公は寛大にも彼を受け入れた。
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最初からずっと国王一族のプライドの高さばかりが目立つ。
主人公もその一人ながら粘り強く、国王たる人物だったと思う。
医者との信頼関係もそういう中で生まれたのだった。
あいかわらずヨーロッパの歴史物は退屈なのであるが、
まあ見所はあったのではないでしょうか。
主人公の嫁はかとうかずこにしか見えなかったけど(場)
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