劇場公開日 2011年2月26日

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英国王のスピーチ : インタビュー

2011年3月1日更新
写真:ロイター/アフロ
写真:ロイター/アフロ

トム・フーパー監督「英国王のスピーチ」のオスカー像は母による恩恵

第83回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、オリジナル脚本賞の4冠に輝いた「英国王のスピーチ」。製作当初は低予算で地味な映画と見なされていた今作をこれほどの成功に導いたのは、トム・フーパー監督の才能によるところが大きい。コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム・カーターという優れた役者を擁し、ヒューマニティとユーモアにあふれた感動的な作品を生み出すまでの過程を、賞レースの真っただ中にいたベルリン国際映画祭期間中にフーパー監督が語った。(取材・文:佐藤久理子)

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「この企画と出合ったのは、じつは母のおかげなんだ。4年前この作品の戯曲をロンドンで朗読する会があって、そこに出席した母から教えてもらった。これはすごく面白い話だと思って、さっそく戯曲を書いていたデビッド・サイドラーに映画の脚本も書いてくれるように頼んだんだよ」

とはいえ、奇遇にも時を同じくしてオーストラリアでは、後にスピーチ・セラピストのライオネルを演じることになるジェフリー・ラッシュがこの戯曲を手にしていた。やがて、“オーストラリア・コネクション”によって両者が出会い、プロジェクトが軌道に乗った。

「まずジョージ六世とエリザベス女王役のキャスティングを始めた。ジョージ六世には最初、レイフ・ファインズやポール・ベタニーらが頭に浮かんでいた。コリンの名前が出て来たとき、若干躊躇(ちゅうちょ)したのを覚えているよ。というのも50歳の彼は39歳という映画のなかの王の年齢からはかなり上だし、肉体的に小柄で脆弱(ぜいじゃく)だった王に比べて身長もすらりと高いから。でも、トム・フォードの『シングルマン』を見て大丈夫だと思った。紳士的で控えめだし、寛大でとても人間的なところは、僕の考える王の性格と共通するものがあった。だから一旦彼と決めてからはもう迷いはなかったよ。ヘレナに関しては、ただもうパーフェクトなキャスティングだと思った。彼女がこれまでに演じた女王はかなりエキセントリックだったけれど(笑)、とても演技派だからね」

写真:AP/アフロ
写真:AP/アフロ

 映画の核となるのが、スピーチ・セラピストのライオネルとジョージ六世の友情にある。それは礼節をわきまえながらも、社会的な身分の違いを超えてゆっくりと、確実に育まれて行く。

「現存するライオネルの日記を読んだとき、僕らはふたりの間に特別な絆があると思った。彼の前でジョージ六世は他人には見せないような表情を見せていたし、ライオネルもまた彼に特別な親愛の情を感じていた。彼はジョージ六世が亡くなったあとすぐに引退したらしい。映画の中でふたりが交わす会話で、『Wがつっかえていたな』とライオネルが言うと、王が『僕だとわかるようにわざとしたんだ』と冗談を言うシーンがあるけれど、これはまさしくライオネルの日記に記されていた通りなんだ。彼以外の前では、ジョージ六世はこんなことを絶対に言わなかっただろう」

現在38歳のフーパー監督は、日本での知名度はまだ低いものの、テレビシリーズですでにエミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞している実力派だ。子ども時代から映画に対する強い愛着を持っていたという。

「12歳のときに映画に恋をして、13歳でカメラを手にしていた。将来監督になろうと決めていたんだ(笑)。若いころはベルイマン、タルコフスキー、トリュフォーなど、ヨーロッパの巨匠たちから多大な影響を受けた。その後、コッポラやスコセッシらが撮ったアメリカ映画も見るようになった。当時はイギリスのBBCで優れた映画がたくさん放送されていたから、皮肉なことに僕はテレビからとても大きな映画教育を受けた。最初の短編もチャンネル4のために撮ったものだし、今の僕があるのはテレビのおかげと言えるかもね(笑)」

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