「スリムクラブの漫才みたいな映画」SOMEWHERE 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
スリムクラブの漫才みたいな映画
監督のソフィア・コッポラは、『CQ』『ロストイントランスレーション』『マリーアントワネット』etc.作品全般において特徴的なのだが、無意味な場面が無意味に長いねぇ。
特に今作は一段と長く感じ、生理的に合わないなぁ〜と、この監督が苦手である事を改めて認識してしまった。
新作映画用のメイク合わせとか、オネエチャン達のポールダンスとか、父娘とのギターゲームetc.etc.全てに渡り、あそこまで長回しする必要性はあったのだろうか?
意外とお色気シーンが多く、男にとっちゃあ、喜ぶべきサービスなハズやのに、それすらも無意味で味気ない印象の方が強い。
ノラリクラリした間を凝縮したら今作の賞味は30分も満たないでしょうね。
引っ張って、引っ張って、引っ張りまくるのを芸としているのは、漫才で例えたらスリムクラブに通ずるテンポと云えよう。
私みたいなセッカチな人間には、あの世界観の中から面白さを見出せってぇのは、酷である。
(実際、M−1では笑い飯を応援してたし…)
漫才はオチが有るからまだ許せるけど、この映画にはロクなオチが有りゃしないから性分が悪い。
最後にいざ可愛い娘さんとお別れとなって、
「やっぱり俺たちやり直せないか?!」とカミさんにコボすのが唯一のオチぐらいだろう。
(っていうか、大オチやけどね)
緊張感の稀薄さゆえに、主人公に肝心な名優のカリスマ性すら微塵も感じなかったから、褒めようがない。
それでも席を立たずに最後まで観られたのは、ソフィア・コッポラ自身が、映画界の巨匠の娘であり、育ち盛りの子供の母親だったからであろう。
本拠地のホテルや映画の宣伝のため出掛けたイタリア(フランスやったっけかな?)etc.父親らしい事は一貫して行わず、むしろ友達みたいな付き合いなのに、父娘間に妙なリアリティが存在していたのは、監督が培ってきた家族愛が反映されたと思う。
でも、ホテル住まいの映画人の話なら、日本人小バカにしたテイストが嫌やったけど、『ロストイントランスレーション』の方が面白かったかな。
このブログ自体オチらしいオチがないまま、最後に短歌を一首
『ゆっくりと 空虚に沈む 宿主の ギブスを撫でる 暫しの天使』
by全竜