「飛躍的に成長していった市場。中学生には高い。」機動戦士ガンダムII 哀・戦士編 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
飛躍的に成長していった市場。中学生には高い。
これは中学生時代にさかのぼる。今とは、1000円の重みも、時間の流れる速さすらも違っていて、見た時の気持ちには完全には戻れない。それでも、主題歌を聞けば、当時の空気や、景色なんかが鮮明によみがえってくるのだ。
自分の人格形成の重要な時期に、少なからず影響を受けた映画。アニメーションの金字塔にして、濃厚な人間ドラマの、ちょうど中編に当たる。私はおくてだったので、恋愛感情のようなものはあまり理解できず、マチルダが散っていく時のアムロの気持ちには到底感情移入できなかったのだが、少なくともランバ・ラルとリュウが壮絶に散っていくさまには魅入られたし、とにかく想像もしなかったような展開のドラマが新鮮で、夢中になったのだ。
主人公が、自分の評価に納得できずに脱走するアニメなんて、この時代あり得なかった。そして、想像もつかないような新兵器。ロボットが暴れまわる非現実的なビジュアルに、説得力を与える斬新な世界観と、同世代の少年たちが巻き込まれていく戦争の無常観。実にていねいに人間が描かれていて、子供ながらに想像力の全てをつぎ込んでもすべてを理解することはできなかった。
そこに、安彦良和という奇跡のアニメーターを起用し、爆発的にヒットした「ガンダム」。この頃、ガンプラブームの黎明期ということもあり、最初期から熱心に見ていたファンとしては、にわかファンの存在は許しがたく、劇場に足を運ぶと不愉快な思いをしたものだ。そんな複雑な心境だったあのころ。お金のない中学生にとって、お小遣いで追っかけるにはガンダムは大きくなり過ぎたのだった。
コメントする