「毒にも薬にもなる巡り合いと選択から産まれる悲喜劇。」冷たい熱帯魚 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)
毒にも薬にもなる巡り合いと選択から産まれる悲喜劇。
内容は、埼玉愛犬家殺人事件を元ネタとした園子温監督の独自解釈作品。舞台は静岡県にある熱帯魚店の店主・社本を中心に反抗期の娘と後妻の家庭不和とその家庭を獲物として狙った熱帯魚店経営の村田夫妻が巻き起こす連続行方不明事件の真相を覗き見ると共に、監督の現代社会に投げ掛ける疑問をテーマにした作品。好きな言葉は『コイツで58人目だ。要は慣れなんだよ!』殺人も日常の村田夫妻に違和感と戸惑いを感じる場面。『愛してるよ』社本がひたすら後妻に告げる場面は自分の気持ちを確認する様で観ていて痛い。愛していないと言っている様に聞こえる。好きなシーンは、やはり手ブレで臨場感を出してる焦燥感と日常生活の一部としての作業を楽しくこなしている辺りの表現は臨場感あり凄かったと感じます。物語は村田夫妻に出会う1/19〜1/31までの約二週間の出来事で構成されるスピードとボディを透明にする🫥技術とスピードと日常を表現する役者の生々しさには目を見張るものがありました。キチンとトラウマになる幼児期の体験『親父がよ頭イカれて此処に閉じ篭ってたんだよ。俺も小さい時から此処に閉じ込められて酷い目にあっちまった…』村田の原風景が伝わってくる様で寂しかった。『丸くてツルツルした地球🌏なんかこの世にねぇんだよ!あるのはゴツゴツした地球だ🌏!』村田の言葉に社本の願望が重なり最後の結末に収束するあたりメッセージ性が強く出過ぎて嫌われる作品かもわかりませんが、自分としては非常にリアルでその場に居合わせたかの様な描写と『This is based on a story』との表記の様にこういうもんだよなと違う現実に引き込まれました。現実の結末は垂れ込みからの逮捕なので実話と違いますが監督の伝えたい事と物語の終わりを決める所は悩んだと思います。村田も自分の小さな頃に社本が似ているビクビク、オドオドの姿を見る度に自分を重ね合わせたんだろうなぁ。『お前だって最強になれるんだよ!』の言葉は『どうせ、お前も悪人だろ?!』と自分で自分の過去を清算しているようで全員が加害者であり被害者なんだと感じました。村田は自分の理解者と技術を伝えたかっただけなんだろう純粋にただそれだけで生きた証を残したかった。この事が忌の際『痛いお尻痛い。お父さん痛いよ。お母さん早く助けて。お父さん、ごめんなさい』に繋がるのは苦しかったし少し笑える。でも最後にエンドロールに星空と丸い地球🌏が見えたことにより社本の救いと一切の事件が闇の中に関わった人間が亡くなり、まだこれから連鎖の如く続いていく予感と共に幸せな結末は、全て死後裁かれたのであろうと感じる面白い作品です。
コメントありがとうございます。まだ観ていないのにネタバレになって見る気を削いでしまったなら、すいません。少し覚悟のいる作品ですが面白かったです。園子温監督の狂気を感じられる作品です。観たいレビューまで、コメント頂き有り難うございます。